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解体屋から救出!奇跡のパトカー・ポルシェ「912」を絶対に諦めない不屈の精神で入手した【自動車変態列伝】

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TEXT: フェルディナント ヤマグチ(FEDINAND Yamaguchi)  PHOTO: 増田貴広(MASUDA Takahiro)

  • ポルシェ 912:ダッシュボード中央にはスピード違反の取り締まり時に、その速度を表示するメーターを装着。その下にはスピーカーのマイク。さらに無線の受話器も装備されていた
  • ポルシェ 912:日本に配備された912のパトカーはすべてエンジントラブルが発生。神奈川県警の車両だけドイツで修理された
  • フロントボンネットにある透明の板は虫除け用のバグガード。当時の無線は固定電話のような形状だった
  • オーナーの倉林高宏さん。1958年10月群馬県生まれ。2025年3月末まで神奈川県警に勤務。白バイで箱根駅伝の先導した翌年、「若い人にも経験させたい」と後輩に任を譲ることを上司に提案など、他人思いな人柄を感じさせる
  • パーツを集め、白バイレプリカを作り上げることも。ガレージには、その作業を待つオートバイにまぎれて、ホンダの輸出用6気筒バイクCBXというお宝も
  • 左の「1090」は、警察学校に展示されていたときに作られたプレート。じつは240Zのパトカーと同じナンバーだったので、あえて管轄地域が消されている。右は、ポルシェが現役時代のナンバーだ(レプリカ)
  • インテリアには警察電話が備わっていた倉林高宏さん
  • ポルシェ 912:リアウインドウまわり。洗車後の水分を完全に取り除くために何人もの隊員が入念に拭き上げたため、塗装が薄くなったそうだ
  • ポルシェ 912:スピーカーと、当時の装備が残されている。フェンダーの上にもスピーカー、バンパーの赤色ランプを装備したまま
  • 古いクルマばかりDIYで修理して乗ってきた倉林さん。そのような経緯もあって、ダットサン1000セダンやジャガーEタイプなど、仲間とのつながりからクルマが集まるそうだ
  • ガレージにはプロ並みの工具やリフトを揃えている
  • 30型フェアレディZも所有。取材後にセドリックスペシャルが出戻りしてきた
  • 倉林さんのお宅のガレージにはお宝級のクルマが並んでいる
  • ポルシェもエンジンオーバーホール中に足まわりをDIYで修理。下の写真はレストア途中のプリンスグロリアスーパー6だ
  • 古いクルマばかりDIYで修理して乗ってきた倉林さん。そのような経緯もあって、ダットサン1000セダンやジャガーEタイプなど、仲間とのつながりからクルマが集まるそうだ
  • パーツを集め、白バイレプリカを作り上げることも。ガレージには、その作業を待つオートバイにまぎれて、ホンダの輸出用6気筒バイクCBXというお宝も
  • ポルシェ 912:スピーカーと、当時の装備が残されている。右ページのフロントの写真を見るとわかるように、フェンダーの上にもスピーカー、バンパーの赤色ランプを装備したまま
  • フェルディナント・ヤマグチ(左)と倉林さん

窮地から救われたポルシェ912パトカー!

覆面コラムニスト・フェルディナント ヤマグチが自動車を愛しぬく人たちをインタビューする自動車雑誌CARトップの連載企画「自動車変態列伝」。今回紹介するのは、今から40年前にわずか4台だけ日本に配備されたポルシェ「912」のパトカーで、現存する1台を所有するヘンタイさん。その方は、なんと元神奈川県警のスゴ腕交通機動隊員でした。実はガレージに迎え入れるまで大変な苦労がありました。早速話を聞いてみました。【CARトップ2022年4月号掲載】

退役パトカーは門外不出!必ずシュレッダー粉砕処理

自動車を愛して愛して愛し抜く、真のヘンタイさんを探訪する自動車変態列伝。今回お話をうかがうのは、なんと元神奈川県警交通機動隊に所属されていた倉林高宏さん。「鬼の交機」としてその名も高い、神奈川県警のなかでも選り抜きの精鋭部隊である。

読者諸兄のなかにも、さまざまな意味で“お世話になった”方が多いのではあるまいか。ここだけの話だが、私も若い時分に小田原厚木道路や西湘バイパスで熱烈な歓迎を受けた記憶がある。倉林さんは現役の白バイ乗り時代に、箱根駅伝の先導まで務められた、文字どおり精鋭中の精鋭だ。

そしてクルマの趣味がまた振るっている。ホンモノのパトカーを、しかも神奈川県警が使用していた、貴重な貴重なポルシェ 912のパトカーを所有しておられるのだ。ボディの横には堂々と「神奈川県警」と記されており、ルーフには旧型の赤色回転灯がそのままの形で装備されている。

倉林さんは、いったいどのような経緯でこのお宝を手に入れたのか。いくら交機の隊員とは言え、ここまでの無理がまかり通るのか。そこには知恵と工夫と果てしない執念のドラマがあったのだ。

最初は白バイ隊員には程遠い交番勤務の警察官

倉林「警察官になったのは、ともかく安定した職業に就きたかったからです。実家は軽井沢に繋がる碓氷峠のバイパスでトラック相手のドライブインをやっていました。昔はそれなりに景気が良かったんだけど、高速が開通したらもういけません。誰も下の道なんか通らなくなり、あっという間に商売上がったりです。

だから父親は『ともかくお前は安定した職業に就いてくれ』と。安定した職業と言えば何と言っても公務員。子供のころからバイクが大好きだったし、いつかは白バイに乗れたら良いな、なんて軽い気持ちで警察官の採用試験に応募しました。そうしたらスルッと合格しちゃった。同時に国鉄も受かっていたんですが、国鉄じゃ仕事でバイクには乗れないものね(笑)。それで神奈川県警に入ったんです。

いや、もちろん初めから交機なんかには入れませんよ。最初は箱詰めの警察官。交番にいる街のおまわりさんです。どうしたら白バイに乗れるようになるかって? そりゃアピールです。『自分は将来交機に入って白バイに乗りたいです』と、ことあるごとに上司や周りの人にアピールする。そうするうちに『試験、受けてみるか?』と声がかかるんです。白バイに乗りたい奴はたくさんいる。

そのために警官になった奴も大勢いる。当たり前ですが希望者全員が乗れるわけじゃない。だから最初は適性訓練です。こいつは白バイに向いているかどうかをしっかりと見極めるわけです。もちろんなかには脱落してしまう人もいる。いや『なかには』なんてものじゃないな。乗れない人のほうが多いんだから。そういう人はまた別の道を歩んで行くわけです。警察にはいろんな仕事がありますからね」

選び抜かれ、鍛え抜かれた精鋭部隊が交通機動隊だ。だが交機も人の子。一定の割合で事故は発生する。

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