WRCグループB終焉直前に登場し、一般販売は86台という希少車
「ハガティ(Hagerty)」傘下のオークションハウス、「ブロードアロー・オークションズ」社が、2025年10月10日にベルギーのビーチリゾート、ノッケ・ハイストのゴルフ場敷地内で「Zoute Concours」オークションを開催。そこに世界的にも台数が少ないWRCグループBカテゴリーのホモロゲーションモデル、シトロエン「BX 4TC」が極上の状態で登場しました。走行距離わずか197kmという個体で、当時のメーカーの情熱と空気をそのまま残っているように感じます。今回の取引には、多くのファンが注目しました。
ファミリーカーの姿を色濃く残すホモロゲーションモデル
1982年から1986年シーズンにかけてWRC(世界ラリー選手権)の最上位カテゴリーとなった「FIAグループB」は、ラリー競技を圧倒的なスペクタクルへと変貌させた。
旧グループ4に代わるこのカテゴリーについて、FIAはメーカーにほぼ完全な自由を与え、わずか200台の市販車の公認取得を義務付けた結果、技術的な火の玉が生まれた。アウディ「クワトロ」、プジョー「205 T16」、ランチア「デルタS4」などがそれである。これらはあまりにも生々しく爆発的な性能を持ち、まるで命を宿したかのようだった。
1985年末までには、急上昇する人気に惹かれて欧州および日本の主要メーカーが相次いで参戦した。その熱狂は一般道にも波及し、ホモロゲート取得用に市販されたロードバージョンを手に入れた裕福かつ幸運なラリーファンは、グラベル(砂利道)やターマック(舗装路)に挑んだ。エンジンが唸り、タイヤが土を噛み、コーナーごとにアドレナリンが解き放たれた。
そして1986年のモンテカルロ・ラリーに、後発のグループBチャレンジャーが現れた。シトロエンBX 4TCである。大人しい量産型のBXをベースに、4枚のドアを持つハッチバックスタイルは維持しつつも、攻撃的なワイドボディはグループBそのもの。大胆で妥協を知らないスタイルだった。ヘッドライト間に配置された4基の長距離スポットライトがその印象をさらに際立たせる。
2.2L直列4気筒ターボエンジンは、量産バージョンでも200psを発生した。5速MTを介して4輪に駆動力を伝達するBX 4TCは、グループBマシンのなかでもっとも重厚長大なファミリーカー風の外観をまといつつも、正真正銘のラリーモンスターであった。ダッシュボード一式とイェーガー社製メーター、そしてシトロエンの伝説的なハイドロニューマティックを装備していた。
ところが、グループBの高名さと派手な光景にもかかわらず、その時代は突然の終焉を迎える。FIAは1986年シーズン終了時に、相次いだ重大事故を理由にこのカテゴリーの禁止を決定したのだ。
BX 4TCの競技活動は結果的に短命に終わった。規約に基づいて生産された200台のうち、販売されたのはわずか86台である。残りの車両はシトロエンによって廃棄された。これによりBX 4TCはラリー史において極めて稀少な幻のモデルとなった。




























































































































































