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1.1億円超で落札されたランチア「ストラトス」!Gr.4マシンは数々の戦歴にも価値があった

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of Broad Arrow

イタリア国内選手権で大活躍したヒストリーの持つマシン

イタリア自動車クラブ発行の登録カードによると、ブロードアロー・オークションズ社「Zoute Concours」オークションに出品された1976年式ランチアHFストラトス ストラダーレは、1976年にイタリア・ヴェネト州パドヴァで初登録され、翌年にFIAグループ4規定に適合するよう改造された個体である。

マッシモ・カソットさんが1978年に車両を購入。同年、ファビオ・ベルティンさん/マルコ・ソルマーノさん組がイタリア国内戦「ラリー・インターナツィオナーレ・デッラ・ラーナ/トロフェオ・ラーナ・ガット」にラリー初参戦。1978年シーズンと1979年シーズンも活躍した。とくに1979年には「ラリー・ウンブロ」で2位、「ラリー1000ミリア」で4位を獲得。その後、1980年に同じくラリードライバーとして活躍していたフランコ・レオーニさんへと売却された。

1982年のイタリア国内ラリー選手権にも精力的に参戦させ、勝利のリストを積み重ねる。フランコ・カッシーニさん/マリーナ・マンドリーレさん組が同年の「ラリー・ヴァッリ・インペリエージ」で、110台以上の出場車両を制して総合優勝を果たした。

このシーズン後半は、主にレオーニさん/ジュゼッペ・ボルゴさんのコンビが搭乗し、「ラリー・アルト・アペンニーノ・ボロニェーゼ-ラリー・ペトロニアーノ」で優勝。さらに「ラリー・アペンニーノ・レッジャーノ」と「ラリー・ヴィエール」では、それぞれ2位を獲得した。

現役引退後は、かつての名ドライバー、ビョルン・ヴァルデガルドさんが1998年にシルバーストーンを駆った雄姿が当時の写真に収められている。

ヒストリックカー・ラリーにも参戦できるコンディション

近年ではフランスのラリーカー修復専門会社「ドーナ・クラシック」社が整備を担当し、2015年および2016年の「トゥール・ド・コルス・ヒストリーク」にも参戦した。それぞれ60番と36番のゼッケンを掲げていた。そして現在、車両は2016年に「トゥール・ド・コルス・ヒストリーク」で使用されて以来となる、アイコニックなピレリの黒/白/赤を模したカラーリングとされている。

今回車両に付属されたドキュメントには、2018年発行のフランス公道登録証、イタリア自動車クラブ(ACI)公認カード、フランス自動車スポーツ連盟技術パスポート、原本となるイタリア登録証の写し、さらに競技活動中当時の写真や記事が多数含まれる。

豊富な競技記録を楽しむだけでなく、次なる所有者は例えば「トゥール・オート」や「トゥール・ド・コルス」といった最高峰のヒストリックラリーへ参戦するという、稀有な体験が得られる。そこではグループ4ストラトスの雄姿と「ディーノV6サウンド」が常に熱狂的に歓迎され、ギャラリーからも愛される光景が演出されるに違いない。

ブロードアロー・オークション社は、今回出品されたグループ4仕様のHFストラトスについて、歴史的価値を力説していた。

「この1976年式ストラトスは、ランチアのモータースポーツ伝説の真髄を体現している。実証済みの競技実績と、メーカーが引退を命じたあとも走り続ける精神を宿している」

とコメントし、60万ユーロ〜80万ユーロ(邦貨換算約1億680万円〜1億4240万円)という、競技歴のあるHFストラトスならではのエスティメート(推定落札価格)を提示した。

2025年10月10日、ノッケ・ハイストのビーチからほど近い「アプローチ・ゴルフ」敷地内の特設会場で行われた競売では、ビッド(入札)が順調に伸びたようだ。終わってみればエスティメートの範囲内に収まる62万5000ユーロ、日本円に換算すれば約1億1000万円という価格となった。WRC戦ではないとはいえ、現役時代に実戦で成果を残したHFストラトスに相応しい価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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