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ターボ車で5時間耐久を勝ち抜けるのか?スズキ「アルトワークス」で挑んだ暑さ対策と完走への戦略

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭(SATO Kei)

  • スズキ アルトワークス:パドルシフトの操作を間違えないよう赤色のテープに明記している。データロガーも搭載している
  • スズキ アルトワークス:エンジンは耐久性と普段の街乗りを考えてノーマルである。耐久ではパワーよりも燃費が重要だ
  • スズキ アルトワークス:インタークーラーには耐熱の塗料をペイントした。ダクトと併せて吸気温度を引き下げる
  • スズキ アルトワークス:オイルクーラーはフロントバンパーの最前面に配置。こちらも耐熱の塗装を施している
  • スズキ アルトワークス:熱を帯びたエンジンルームの空気を効率よく抜くダクト。見た目もレーシーでカッコいい
  • スズキ アルトワークス:タイヤはディレッツァ ZIIIだ。エンジンがノーマルなのでブレーキは純正キャリパーで十分である
  • スズキ アルトワークス:ダウンフォースが効きそうな大型リアウイングを装着。高速サーキットならかなり効果大だ
  • スズキ アルトワークス:燃費の計算はかなりシビアだ。安全に楽しむことを優先するが、上を目指す気持ちも忘れない
  • スズキ アルトワークス:予選は1分7秒757で総合10番手。燃費の計算から弾き出された想定ラップタイムに近い
  • スズキ アルトワークス:新規格NA車に混ざって孤軍奮闘するターボエンジンのアルトワークス。決勝が5時間と長いリンクは不利か

NAマシンが台頭するレースで熱量の高いターボマシンで挑む

2025年、東北地方で開催されている軽自動車の耐久レース「東北660シリーズ」に、スズキHA36型「アルトワークス」で挑むチーム「HMJM」が注目を集めています。そのマシンは普段使いのアシとしつつ、レースを楽しむ彼らの工夫や戦い方を紹介します。

不利な燃費を安全最優先のラップタイム設定で完走を目指す

過給器の有無や新規格または旧規格を問わず、軽自動車なら何でもOKの東北660耐久レース。しかし、ほとんどの参加者が俗にいう新規格NA車で、ターボやスーパーチャージャーは皆無に近い。そのような現状のなか、ターボエンジンを搭載するスズキHA36型「アルトワークス」で参戦するチーム「HMJM」のメンバーに話を伺ってみた。

「東北660シリーズをWEB記事で知り、2024年の最終戦に初めてエントリーしました。以前は筑波サーキットの耐久レースを主戦場としていましたが、大排気量車がメインのため速度差があまりにも大きすぎ、同クラスの車両だけで遊べるイベントを探していました。今シーズンは開幕からフル参戦を続けています。3月のエビスサーキット東コースでは総合3位を獲得しました」

第2戦のリンクサーキットはHMJMのドライバー全員にとって初めてのコースであり、シリーズ最長の5時間なので燃費のよくないターボ車にとっては非常に厳しい条件である。くわえて30℃を軽くオーバーする猛暑は人にもクルマにも厳しいことが予想され、定めた目標はついては次のように話す。

「全員の安全が最優先、次にクルマ、家に帰るまでがレース」

作戦は総合でも可能な限り上の順位に入れるよう、1回につき3分間のピットストップを伴う給油を、2回だけで済むペースで走行することに決定した。朝の練習でコースの確認と燃費の計算を済ませ、決勝の基準ラップタイムを1分6~7秒台に設定。このペースならドライバーの操作に余裕が生まれるし、駆動系やブレーキを含めたクルマの負担も大きくない。

エンジン系の冷却を徹底してAGSのトラブルも克服

また過酷な真夏の耐久レースに備えて、車両の冷却チューンも欠かさなかった。まずはインタークーラーへの導風と排熱を同時に行なえ、かつ軽量化にもなる一石三鳥ともいうべきボンネットである。またオイルクーラーとインタークーラーのコアに耐熱の塗装を施し、フェンダー後端には排熱するための汎用ダクトも埋め込んでいる。おかげで走行中の油温も水温も安定し、トラブルなくレースを完走し、目標を達成した。

とはいえ課題やトラブルがなかったわけではない。まずは電源との接続不良でクールスーツのポンプが動かず、猛暑のなか5時間という長丁場を戦い抜く羽目になったこと。また時間帯によってはピットが強烈な直射日光に晒され、待機中のドライバーも暑さで体力を削り取られたことだ。来シーズンはこのあたりを対策して、より上のポジションを目指したい。

普段は家族の買い物に使えるクルマというのが購入の条件であったため、これ以上のチューニングは考えておらず、ミッションも2ペダルのAGS(オートギヤシフト)である。今まで使ったことがないAGSゆえに原因が分からず2年ほど試行錯誤したのは、高負荷時にパドルを操作してもシフトチェンジが大幅に遅くなる症状であった。原因はR06Aエンジンでよく起きるスラストメタルの脱落と判明した。メンテナンスを依頼している『アバンテオートサービス』の協力で、対策品に交換し、ようやく本来の性能を取り戻すことができた。

最終戦のエビスサーキット西コースは2024年に経験済みであり、例年どおりであればほかにもターボ車が数台参戦してくるはずだ。総合での上位を目指すのは当然として、同じクラス内でのバトルも存分に楽しみたい!

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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