ボラーニ製ワイヤーホイールやフェンダーミラーなど快適&豪華装備満載のGT40ストリート仕様
このほどRMサザビーズ「MIAMI 2026」オークションに出品されたフォードGT40、シャシーナンバー「P/1058」は、GT40 Mk Iとして製造された87台のうちの1台である。それと同時に、FIA「グループ4」の公認要件を満たすべく、ストリート仕様に仕上げられたわずか31台のうちの1台でもある。
このGT40ロードバージョンには、フェンダーミラーやウィンドスクリーン貼りつけ式のリアビューミラー、バックランプ、ヒーターつきフロントガラス、レザー張りシート、ドアポケット、灰皿、シガーライター、フルカーペット内装など、多くの快適装備が搭載された。さらに伊「ボラーニ」社製のワイヤースポークホイールを装着し、ノーズ先端にはマスタングと同様の「FORD」バッジが追加されている。
顧客向け販売の一環として、フォードは「プロモーション&ディスポーザル・プログラム」と称するマーケティング計画を策定。対象車両となるGT40はディーラー間を巡回展示されたのち、最終的に販売される仕組みだった。この個体は同プログラムに割り当てられた20台のMk I仕様車のひとつであり、1966年12月にFAVのスラウ工場からフォードのディアボーン工場へと輸送された、7台のGT40に含まれていた。
「カーメンレッド」の塗装にブラック内装のシャシーNo.P/1058は、1967年2月に正式に同プログラムへ配属され、その後6台の姉妹車とともにフォード部門カーマーチャンダイジング部門へ委託された。
フォードの権威として知られるロニー・スペインの研究によれば、P/1058は1967年4月、マサチューセッツ州シーコンクにある伝説的な「タスカ」フォード販売店で、当時の大ヒット作「マスタング」の発売3周年記念イベントに展示されたと言われている。
ディーラー社主のボブ・タスカは、フォードの国内向けモータースポーツ企画「トータル・パフォーマンス」時代においては著名な存在であり、ディーラーサポート車両のレース参戦や顧客向けスピードショップサービスの提供を行っていた。くわえて、数多くの「シェルビー」車両を販売し、のちに「シェルビーGT500 KR」の基盤となる「428コブラジェット」オプションの原型を考案した人物でもある。
1967年12月、このGT40はマサチューセッツ州リンにある著名なパフォーマンスディーラー「アル・グリッロ・フォード」社に売却されたのち、翌1968年末には同州ブルックライン・ビレッジのデイビッド・キャロルが入手。彼はボディをイエローに再塗装した。
ライバルフェラーリに遠く及ばないオークション価値を知れば、H・フォード2世は悲しむに違いない!?
1969年2月、このフォードGT40は「スキップ・バーバー・レースドライビングスクール」創設者として有名なレーシングドライバー、ジョン「スキップ」バーバーの手に渡ったのを皮切りに、複数のモータースポーツ愛好家のもとを渡り歩くことになる。1980年代には、ブルーのレーシングストライプが入ったホワイトへの再塗装を含むフルレストアが施され、1989年はワトキンスグレン、1994年にはエルクハートレイクの両サーキットにて開催された「GT40リユニオン」に出走したことが確認されている。
2002年2月には、アリゾナ州パラダイスバレーのジョージ・ゲッツが入手。彼は直ちに、ボディをオリジナルのカーメンレッドに再塗装させる。これにより当時の正統な外観を再現するとともに、内装も可能な限りオリジナルの内装材を保持するよう修復した。
2011年、このGT40は著名なディーラーであるピーター・クラットに売却され、2013年5月のフォンタナ・スピードウェイで開催された「ナショナル・シェルビー・コンベンション」や、ミシガン州プリマスでの2013年「コンクール・デレガンス・オブ・アメリカ」など、ハイレベルなイベントで披露された。同年後半には、彼自身のディーラーショールームのフロアにも展示されている。
そして2014年8月、GT40はテキサス州在住の著名なコレクターである現オーナーが入手。その所有期間中、必要に応じて細やかな手入れと整備を受け続けてきた。2021年にはエンジンがオーバーホールされ、再装着前に適切な調整がテストベンチ上で行われている。
また、厳選されたカーショーイベントにも出展され、2018年にはテキサス州シーブルックで開催された「キールズ・アンド・ホイールズ・コンクール・デレガンス」でクラス最優秀賞を受賞しているほか、有名なサーキットイベントでテスト走行を披露する機会もあったようだ。
それでも「ドッグファイト上等」な本気のヒストリックレースに参加してきたGT40たちと比較すれば、P/1058が辿ってきた使用歴は比較的穏やかなものだ。純正のオリジナリティが保たれていることの証として、車体各パネルにはリベット留めの「1058」タグが確認できる。さらにリアクラムシェルの下には、FIAグループ4ホモロゲーションに必要な収納要件を満たすため設けられた、小さな「ラゲッジボックス」さえ残されている。
いっぽう現在の所有者により、シートは軽量ブラックファブリックと真鍮製アイレットで仕上げられた軽量レーシングスタイルのものに交換されているが、オリジナルのシートカバーとコンポーネントも、今回の販売品に含まれるとのことだった。
このフォードGT40 Mk Iロードバージョンに、RMサザビーズ北米本社が設定したエスティメート(推定落札価格)は、650万ドル〜800万ドル(邦貨換算約10億2050万円〜約12億5600万円)という、歴史的に貴重であることを考慮したと思われるもの。ところが2月27日に行われた競売では、売り手側が希望した「リザーヴ(最低落札価格)」には届かず、流札に終わってしまう。
フォードGT40 MkⅠのロードバージョンという超希少な個体でありながら、ライバルだったフェラーリ250GTOには遠く及ばないオークション価値。ル・マンというレースでは4連覇を果たすという試合には勝ちながらも、オークションという現代の価値勝負においてはライバルに遠く及ばなかった。残念ながら、現在では「Price Upon Request(価格応談)」という文言とともに、RMサザビーズ北米本社営業部門による個別販売へと継続されているようだが、これを知ったらヘンリー・フォード2世はなんと思うのだろうか。
※為替レートは1ドル=157円(2026年3月28日時点)で換算





















































































