一瞬気が遠くなるほどの加速Gが味わえた
モータージャーナリストの中村孝仁氏が綴る昔話を今に伝える連載。これまでたくさんのクルマを試乗してきた中村氏ですが、あまりの加速「G」に驚き、アクセルを抜いてしまったフォード「GT」について振り返ります。
フォードが2003年に送り出した「GT」
断っておくが、本物のGT40ではない。あくまでもそれをオマージュして作ったフォードGTである。調べた限り、本当の本物と呼べるフォード GT40は、日本には2台しか存在しないようだ。本当の本物という意味は、ちゃんとヒストリーの中にでてくるシャシーナンバーを持って、どこに初めてデリバリーされたかわかっているクルマを言う。日本にはかなり多くのレプリカ、もしくはそれに準ずるフォードGTが多く存在するから、それを見分けるのは大変である。
そんなわけだから、オマージュで作られたフォードGTは決して偽物ではないし、レプリカでもない。このクルマ、2002年のデトロイトショーにコンセプトカーとして登場し、その翌年、正式に生産されることが決まったものである。2002年のデトロイトショーでは現場に居合わせた。
登壇したのはビル・フォードとキャロル・シェルビー。けたたましい音を立てて会場入りしたのは、当時のGT40である。そして、これをオマージュして作られたフォードGTが後から入ってきた。消防法だのうるさいことを言わないお国柄だから、トンてもなくデカいまさにレーシングカーそのもののサウンドが、会場に響き渡った。
そしてフォードGTは2005年から生産が開始され、結局合計で4000台ほどが生産されたそうだ。自分の写真を見てみると、撮影したのは2005年とあるから、本当にごく初期に日本にやってきたモデルのようだ。
強烈な加速Gにおもわずアクセルを戻した
この時まで、自分で運転して加速中にアクセルを戻したことは1度しかなかった。その1度はルーフCTR、いわゆるイエローバードと言うモデルに乗った時のこと。ボンとアクセルを踏んでは見たものの、そのあまりに強烈な加速Gで、思わずアクセルを戻してしまったのだ。そして2度目の体験がこのフォードGTであった。
搭載されていたエンジンは、5.4Lのスーパーチャージャー付きDOHC4バルブV8で、その出力は557ps。当時モノの7Lエンジンを搭載するGT40マークIIですら、491psと言われるから、いくら安全デバイスが付いたクルマとは言え、1960年代のレーシングカーを凌駕するパフォーマンスを持っているから、これを手懐けるのは、並大抵の腕では無理である。












































