職人技で“新車以上”へ。1991年式スズキ・ジムニー徹底再生記
最近では旧車を長く乗り続けるためのフルレストアが注目を集めている。神奈川県のオーナーからの依頼で、プロショップが半年以上をかけてボディの再生から機関系のオーバーホールまでを徹底的におこない、美しく蘇らせたスズキ「ジムニー」がある。職人の手とオーナーの深い愛情によって当時の輝きを取り戻した、1991年式スズキ ジムニーの徹底再生の軌跡を追う。
半年超の大工事で完全復活! 愛知の職人が仕上げた再生プロジェクト
愛知県一宮市を拠点にスズキ ジムニーをレストア(老朽化した車両の復元)してきたプロショップである三割屋に、1台の1991年式スズキ ジムニーが持ち込まれた。
もともとは神奈川県のオーナーが所有しており、長年乗り続けてきた愛車の劣化を感じて「このクルマを本気で蘇らせたい」と考えたのが始まりである。三割屋のSNSで公開されていたレストア実績に惹かれ、愛知県一宮市まで自ら足を運んだ。
「やれることはすべて、最大限にやってほしい」という依頼を受け、半年以上におよぶ大掛かりなプロジェクトがスタートした。同店スタッフの中村さんに徹底レストアの内容について話を伺った。

SNSをきっかけに神奈川から愛知へ。オーナーの熱意が生んだフルレストア
ベースとなった車両のもともとのボディカラーはワインレッド系だったという。過去に何度か補修塗装された形跡はあったものの、リアフェンダーのタイヤハウス(タイヤを覆う部分)やリアフロアには深刻なサビが進行していた。
そこで三割屋は、単なる補修ではなく根本的な修理を選択した。スポット溶接を剥がしてリアのフロアパネルやリアタイヤハウスを新品パネルへ交換している。またクルマの構造上、前まわりがすべて外せるため、取り外したのちにフレームや水が入り込む内部の腐食部分を徹底的に除去した。サビはすべて削り落とし、防錆処理を施している。
見えないサビまで徹底除去。ボディは一から再構築
さらに塗装作業ではフロントやリアのガラスをすべて取り外し、ガラスやウェザーストリップ類も新品へ交換した。オーナーの「旧車らしい雰囲気にしたい」という要望を受け、最終的に選ばれたのはフォルクスワーゲンの純正色である鮮やかなオレンジだった。
「元オーナーさんはオレンジが好みだったみたいで、さまざまな自動車のカタログを見比べて最終的にメタリック入りのオレンジに決まりました」
クラシカルでありながら個性的なカラーは、会場でも圧倒的な存在感を放っていた。
エンジンから足まわりや内装に至るまで妥協なく仕上げる
レストアは外装だけに留まらない。
「エンジン本体のリビルド(再生)品が手に入ったので、それを軸にターボチャージャー、オルタネーター(発電機)、セルモーターなど主要補機類はすべてリビルト品へ交換しました」(中村さん)
エンジンまわりのゴムホース類も交換し、足まわりも徹底的にリフレッシュされている。プロペラシャフトやハブのベアリング、各種シール類はオーバーホール(分解点検修理)や交換を実施した。ショックアブソーバーにはプロコンプ製の新品を採用し、装着されていた社外品のリーフスプリングを留めるシャックルのブッシュも打ち替えている。社外リーフスプリングにより約2インチのリフトアップ量となっている。
ホイールもスペアを含めた5本すべてを新品へ交換し、走る、曲がる、止まるという基本性能を現代レベルまで引き上げた内容となっている。

「一番気を使った」のは内装の天井張り替えだった!
中村さんが「じつは一番神経を使った」と語るのが、内装の天井生地の張り替え作業だ。純正内装の天井生地は薄いスポンジと一体化しており、生地を剥がした際に経年劣化したスポンジがボディ側へ貼り付いてしまう。まずボディに残った古いスポンジを丁寧に削ぎ落とす地道な作業が必要になる。その後、強力なスプレー糊を使用して新品純正の天井生地を貼り込むのだが、シワが入ればやり直しは困難である。地味ながら高度な集中力と経験値が要求される工程だ。
職人とオーナーの想いが詰まった作品が新たな持ち主を待つ
半年以上をかけて完成したスズキ ジムニーを見たオーナーは、想像以上の仕上がりだったと大きく感動したという。その後、4年から5年にわたり大切に乗り続けていたが、家庭の事情で駐車スペースを空けなくてはならなくなり、やむなく手放す決断をした。
そこで三割屋が車両を引き取り、愛知県常滑市にあるAICHI SKY EXPO(愛知県国際展示場)で開催されたオートメッセ in 愛知の会場にて、レストア技術のアピールと販売を兼ねて展示したというわけだ。
ベース車両代を除いたレストア費用だけでも350万円以上がかかっているが、イベント会場での販売価格は300万円に設定されていた。屋内保管されていたため、完成から数年が経過した現在でもコンディションは良好に保たれている。
職人の手によって当時の輝きを取り戻した1991年式スズキ ジムニーは、新たなオーナーのもとで走り続けることだろう。
















































