公式ライセンス取得で完全新設計され究極の「エスコートMk1 RS」が降臨
英国で開催された「ロンドン コンクール2026」に、50年以上の時を経て完全新設計されたフォード「エスコートMk1 RS」が世界初公開された。名門の公式ライセンスのもと、最新技術と軽量素材を惜しみなく投入し、車重わずか895kgの軽量ボディと1万回転まで吹け上がる自然吸気エンジンを組み合わせている。純粋な運転の喜びを徹底的に追求したという新生エスコートは現代のスポーツカーのお手本となり得るのか、その究極のパフォーマンスに迫る。
伝説のレーシングカーをオマージュ! ゼロから新設計された美しい軽量ボディ
1968年に欧州フォードから誕生した初代「エスコート(Mk1)」は、コンパクトで扱いやすい大衆車として広く親しまれる一方で、過酷なラリーやツーリングカーレースで数々の栄光を手にした伝説のモデルである。とくに「RS(ラリースポーツ)」の名を冠した高性能バージョンは、世界中のエンスージアスト(熱狂的なファン)の心を鷲掴みにした。
今回、フォードから歴史的名車の復刻を公式に託された英国のブランド「ボアハム モーターワークス」は、ロンドン コンクール2026にて、その伝説を現代に蘇らせた市販仕様のプロトタイプを一般公開した。これは単なるレストアやチューニングカーではなく、フォード モーター カンパニーの公式ライセンスのもと、現代の素材と製造技術を用いて往年の名車をゼロから再構築したモデルである。
エクステリアデザインは、1967年と1968年に活躍したアラン・マン・レーシングの競技車両から強い影響を受けている。専用設計のフロントサブフレームによってホイールベースを30mm延長し、当時のレーシングカーを象徴する「バブルアーチ(大きく膨らんだフェンダー)」を採用した。

さらに、モダンなLEDヘッドライトは、当時のラリーカーがレンズ割れを防ぐために貼っていた「テーピング(十字テープ)」をモチーフにするなど、歴史へのリスペクトが細部にまで宿っている。開発の軸となったのは、895kgという極めて軽量な車重と、1万回転まで許容する自然吸気エンジンの搭載である。しかも足元には、当時のフォード純正RS 4本スポークをオマージュしたホイールまで再現されている。このシンプルかつ妥協のない哲学により、ダイレクトな操作感と圧倒的な俊敏性を持つドライバーズカーが誕生した。
F1技術で1万回転まで吹け上がる! ドッグレッグ式MTを組み合わせた専用エンジン
パワートレインは2種類が用意される。ひとつは当時のモータースポーツ用エンジンに敬意を表した1.8リッター4気筒ツインカム仕様だ。こちらは最高出力185馬力で、トルクが約180Nm、最高許容回転が8500回転で4速マニュアルという仕様になっている。
そしてもうひとつが、完全新設計となる自然吸気2.1リッター(2152cc)直列4気筒DOHCエンジンである。
この「ボアハムTEN-K」と名付けられたエンジンは、フォード エスコートMk1 RSのために専用開発された。当初の目標出力を上回る330psを達成しつつ、1万回転まできっちりと吹け上がる特性を持つ。F1から着想を得たバルブ形状や専用の独立スロットルボディ(エンジンに入る空気の量を調整する装置)を採用し、スムースなレスポンスを実現している。

最新の3Dプリント技術を駆使して成型されたシリンダーブロックなどにより、エンジン単体の重量はわずか85kgに抑えられた。これにレーシングカー特有の「ドッグレッグ式(1速が左下に配置されるレイアウト)」を採用したクロスレシオ(シフトアップしてもエンジン回転数があまり落ちないギヤ設定)の5速マニュアルトランスミッションを組み合わせることで、どのギヤからでも俊敏な加速を引き出すことができる。
名門時計ブランドとのコラボも! 走る喜びを極限まで高めるアナログな操作系
シャシー構造も独自に開発されており、リアにはアルミ製のセンターハウジングとチタン製アクスルチューブを組み合わせた完全フローティング式のアクスルシステムを採用した。当時のレース用の競技車両と比較するとバネ下重量を50パーセント(40kg)削減しているという。
足回りにはヨコハマタイヤの「A052」(フロント205/50 R15、リア225/50 R15)を履き、専用の軽量ブレーキシステム(フロント4ピストン、リア2ピストン)を装備することで、強大なストッピングパワーを発揮する。
車内にはアナログな操作系を残しながらも、カーボンファイバー製のパネルを多用して機能美を追求している。センターコンソールには、高級時計ブランドの「ブライトリング」と共同開発されたクラシックなツインラリークロノグラフが鎮座する。

この特別なモデルについて、ボアハム モーターワークスのデザインディレクターであるウェイン バージェスは次のように語っている。
「当時の競技車両が持つ機能美を理解することがもっとも重要でした。プロポーションや機構のすべてが、純粋な走りのために存在しています。視覚だけでなく、感情や動的な部分でも本物を感じられるクルマを目指しました」
1974年当時のエスコートMk.1の最後期型に搭載されていた2リッター4気筒ツインカムのBDGエンジンは、インジェクション方式の燃料噴射を使用し275馬力/9250rpmという驚異的スペックを誇っていた。しかも当時からワークスカーの車重は徹底した軽量化が図られており、最軽量仕様では750〜760kgほどだったという。
これを現代の技術で甦らせたイギリスのボアハム・モーターワークス(Boreham Motorworks)製フォード・エスコート Mk1 RSの生産台数は世界限定150台となり、左ハンドルと右ハンドルの両方が用意される。価格は29万5000ポンド(約5900万円:米国では40万ドル)からとなっている。これほど過激なスペックでありながら「2年または2万マイルの保証」が付帯しており、メーカーが「ガレージに飾るだけでなく、実際に乗って楽しんでほしい」と願っている証でもある。モータースポーツの血統を受け継ぎ、現代の技術で磨き上げられたこの1台は、世界中のクルマ好きを魅了することだろう。

























































