制御系を最新D型のスポーツモードにアップデート
スバルは2025年5月8日、ZD8型「BRZ」Aタイプ〜Cタイプ向けにエンジン、トランスミッションの制御を変更し、よりコントローラブルになるソフトウエアのアップデートを発売しました。MT車用が5万5000円、AT車用が3万3000円(すべて消費税込)で、施工はスバルディーラーで行うことができるアップデートサービスについて、紹介します。
MT車向けはアクセルレスポンスを強化
スバルZD型「BRZ」向けアップデートサービス「SUBARU Sport Drive e-Tune」とは、MT車向けはまず専用のスロットルセッティングに変更し、全回転域でアクセルペダルを踏み込んだ瞬間のエンジンレスポンスが向上するというもの。
ノーマル状態では、アクセルペダルの踏み込む量、踏み込むスピードとエンジン回転をセンシングし、ドライバーが急いでいるのか、いないのかに合わせて、エンジンに対する要求トルクを決めていくというプログラムなのだ。アクセルペダルを速く踏み込めば、ドライバーは大きなトルクを要求していると判定し出力する。逆にわずかな踏み込み量であれば、トルクは低くするという制御を行う。
SUBARU Sport Drive e-Tuneは、わずかな踏み増しにもリニアに反応するため、コントロール性とダイレクト感がより高まり、レースカーのように刺激的で緻密な走りを思いのままにできるとアピールしている。
スーパー耐久レースで培った制御技術を投入
そしてAT車は、ノーマルではオーバーレブを防ぐため、シフトダウンできるエンジン回転数の上限を低めに設定していた。しかし、このSUBARU Sport Drive e-Tuneでは、その上限を引き上げるとともに、より緻密な制御に変更している。エンジン回転数が高い状態、つまりコーナー進入時などではより早いタイミングでのシフトダウンを可能とし、車両の姿勢づくりなどコントロール性が高められ、またブリッピングも高回転域まで行うため、エンジンサウンドのスポーティさも際立つとしている。
これはATの特性をうまく利用した演出も含まれており、2ペダルドライブをより愉しくする狙いもある制御だ。技術的にはシフトダウン操作の信号を拾うことで、ブリッピングさせ、ドライバーの気持ちを高揚させるというもの。
これらの制御プログラムが作れた背景は、スーパー耐久への参戦が強く影響している。2022年シーズンにBRZでフル参戦したとき、CNF(Carbon Neutral Fuel)のテストをしていたが、こうした制御系のプログラムの開発も同時に行っていた。とくにMT車でのフラットシフトとブリッピングはこの時に開発されている。
フラットシフトはアクセルペダルを踏んだままでもシフトアップができる制御で、一時的にエンジンの燃焼が止まり、オーバーレブしないレース車向けプログラムだ。またブリッピングはヒール&トーの同調ミスを防ぐ狙いと、操作の簡略化を狙って開発されている。残念ながら今回のSUBARU Sport Drive e-Tuneには含まれていないが、こうしたレースカー向けプログラムを開発していく過程で、量産車へのフィードバック可能なデータが作れたというわけだ。
SUBARU Sport Drive e-Tuneの価格はMT車用が5万5000円、AT車用が3万3000円(すべて消費税込)で、ZD8型Aタイプ〜Cタイプが対象となる。ちなみにSUBARU Sport Drive e-TuneはMTおよびAT用ともにD型のスポーツモードの制御特性と同じだ。しかしD型のような走行モードを切り替えるスイッチは追加されない。
AMWのミカタ
このSUBARU Sport Drive e-Tuneは、ソフトウエアのアップデートで車両のマイナーチェンジができる良い例だ。従来、こうした性能変更はディーラーでは対応できなかったが、OTA(over the air:オンラインアップデート)によって、対応できるようになった。
さらにスペック変更までできるとなお良いが、日本では車検証の数値と異なる変更はNGとなるため障壁は高い。したがって、こうしたドライビングプレジャーや五感に訴えるもの、ADAS系(先進運転支援や安全運転支援)のOTAは増えていくことになる。