ポルシェがマクラーレンにF1エンジンを搭載した911をプレゼント
マクラーレンは1980年代半ばのF1GPにおいてドライバーズチャンピオンシップを5回も獲得する圧倒的な強さを見せつけた。それは、当時マクラーレンが使用していた「MP4/2」シャシーに1983年末から搭載されたTAGポルシェ製の1.5L V型6気筒ツインターボエンジン、「TTE P01」による功績といえる。TAGポルシェによるエンジン供給は1987年をもって終了したが、ポルシェはそれを記念してTTE P01エンジンを搭載したグランプリホワイトの911をマクラーレンに贈った。
ランザンテを率いるディーン・ランザンテが最初にマクラーレンにリクエストしたのは、この特別なポルシェ911を譲ってもらうことだった。しかし、それはマクラーレンにとっても大切な遺産であり、その願いは叶わなかった。
その代わりにランザンテが手にしたのは、マクラーレンに保管されていた11基のTTE P01エンジンである。ランザンテはそれをベースに、コスワースの協力を得て構成部品の多くを再設計した。ピストンやコネクティングロッド、バルブ、バルブスプリング、ターボチャージャー、より効率の高い冷却システム、オイルヒートエクスチェンジャー、チタン製のテールパイプを備えたエグゾーストシステムなどを独自の仕様に改良している。注目の最高出力は510psであり、6速MTとの組み合わせで最高速は320km/hを実現する。
アラン・プロストが使用したF1エンジンを搭載
今回RMサザビーズがモントレー・オークションに出品したポルシェ911 TAGターボ バイ ランザンテは、ランザンテによって「AP87」のコードネームが与えられたものだ。搭載されるTTE P01エンジンには「051」のナンバーが打刻されており、これは1986年から1987年にかけてアラン・プロストが使用したエンジンであることが確認されている。
軽量なカーボンファイバーやアルミニウムのパネルで再構築されたボディーは鮮やかなミントグリーンにペイントされている。一方、ブラックを基調色とするインテリアでは、ブルーとグリーンのタータンチェックを配したシートが、その存在感を強くアピールしていた。
ランザンテによってAP87として完成された後の走行距離はわずか約500kmであり、2025年3月にはメンテナンスと定期アップグレード(ECU及びソフトウエアの書き換えを含む)も受けている。そのコンディションの素晴らしさはRMサザビーズも高く評価するところであった。
180万ドルから210万ドル(邦貨換算約2億6492万円から3億908万円)というエスティメートは、このモデルがわずか11基しか存在しない、TAGポルシェ製のエンジンを搭載するレストモッド911の希少性を含めれば妥当なものと考えられたのは、入札者の誰もが同じだったのだろう。白熱したオークションの結果、最終的にそれは193万ドル(邦貨換算約2億8406万円)落札された。このリザルトが、ここ最近さまざまなメーカーが参入するレストモッドの世界に与える影響力はきわめて大きいといえる。



































































































