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復権をかけるスズキ「アルト」!東北660選手権で“絶対王者”のマシンへのこだわりとは

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭(SATO Kei)

  • スズキHA23V型アルト:室内はごくシンプルな作りだ。なおAガレージでは早い時期からサイドバーを装着している
  • スズキHA23V型アルト:各部が擦り切れたバケットシートは、サーキットを走り始めたころから使っている年代物である
  • スズキHA23V型アルト:サーキットを走り始めて35年。JAF公認レースでも草レースでも豊富な実績を残す阿部選手
  • スズキHA23V型アルト:フロントグリルを加工しエアクリーナーへ外気を導く。それでもパワーではダイハツ勢が上まわるか
  • スズキHA23V型アルト:2024シーズンの終盤から導入したECUのLINK。セッティングの途中ではあるがフィーリングは上々だ
  • スズキHA23V型アルト:軽さとオフセットを追求したホイール。現在は14インチだが、今後は15インチもテストする予定だ
  • スズキHA23V型アルト:ボンネットとリアゲートもカーボン製に交換した。HA23Vの武器である軽さをさらに磨いている
  • スズキHA23V型アルト:軽さの追求はドライバーの装備にも及び、カーボン製ヘルメット『BELL GT6』を愛用する
  • スズキHA23V型アルト:エンジンは規則により通常のオーバーホールのみである。勝利の鍵を握るのはECUのセッティングとなる
  • スズキHA23V型アルト:1クラスで孤軍奮闘する阿部のHA23V。初めての参戦から同じボディを使い続けている

愛機HA23アルトにこだわり続けて王座奪還を目指す

東北660選手権の1クラスで、長年「絶対王者」と呼ばれてきた阿部智文選手。愛機はスズキ HA23V型「アルト」です。かつては全戦ポール・トゥ・ウィンを達成するほどの実力を誇りましたが、近年はダイハツ勢の台頭に苦戦。それでも「HA23にこだわりたい」と、2024シーズンからマシンを大幅にアップデートしました。再び王座を取り戻すために挑み続けるベテランの姿は、まさに“走る伝説”そのものです。

35年のレースキャリアを持つベテランが東北660選手権初シーズンから参戦

東北660選手権の初期から欠かさずエントリーし続け、1クラスで不動の絶対王者だった時期もあるのが阿部智文のHA23V型アルトだ。近年こそ熟成が進んだダイハツ「エッセ」や「ミラ」の後塵を拝する機会も増えたが、阿部は「HA23にこだわりたい」と決意を新たにする。

車両の前に、まさしく歴戦の勇士というべき彼の35年に及ぶサーキット歴を紹介する。20代の前半からJAF公認のスターレットのワンメイクレースや、マイカーのAE86で数々のサンデーレースで優勝やコースレコードなど、輝かしい結果を残した。東北660選手権に初参戦したのは2013年の開幕戦である。

きっかけはトヨタ「スターレット」やトヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ(AE86)」の時代から付き合いがある、宮城県名取市のプロショップ『Aガレージ』に誘われたためだ。ただ当初はL700ミラを使用しており、翌年からマシンをアルトに変更した。

エンジン性能で勝るダイハツ勢の台頭で挫折を味わうことに

しばらくは同じ時期に参戦していたAガレージ代表である姉崎嘉徳の背中を追い、彼が一線を退きバックアップに徹した頃から1クラスは阿部の独壇場となる。スポーツランドSUGOとエビスサーキット西および東コースのレコードを記録し、全戦でポール・トゥ・ウィン達成など、1クラスは阿部の一強といえる時期が続いた。

そのうちに2クラスからステップアップを果たした若手ドライバーや、JAF公認レースで活躍したベテランたちが続々と1クラスに参入する。彼らのほとんどはエンジンのトルクがあり、ギヤの選択肢も広いダイハツ車をチョイスした。それでも数年は経験の差で阿部が勝利を収め続けていた。

しかし、エンジンのオーバーホールやフルコンの採用など、絶え間なくアップデートをし続けるライバル勢に対して、阿部は通常のメンテナンスだけで戦闘力はほぼ変化ナシだった。徐々に優勝から遠ざかり表彰台に立てないことが増え、マシントラブルとはいえ初めてのリタイヤも喫した。

ボディパーツの軽量化やECUの変更で大規模アップデート

そこで阿部は2024シーズンの途中から意を決して大幅なアップデートを敢行する。ブローしたエンジンを新たに組み直し、ECUは最新のLINKに変更した。さらにカーボン製のボンネットとリアゲートでさらなる軽量化を進めた。

ギヤ比に関しては、同じHA23アルトで12年も戦い続けただけあり、東北660選手権が開催される全コースに対応できるノウハウを持っている。またホイールは軽さにもサイズにも相当こだわり、たどり着いた答えがボルクレーシングCE28の14インチだ。ただし今後は15インチを投入しての大径化も見据えている。ECUのセッティングを煮詰め、目指すは前人未到のSUGO1分49秒台である。

なお、今シーズンの開幕戦は3位で表彰台の一角には立った。とはいえ、優勝が定位置だった阿部だけに、この結果に満足しているわけではない。生まれ変わった愛機HA23V型アルトとともに、再び常勝の称号を手に入れる日は遠くなさそうだ。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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