EV用プラットフォームとICE用プラットフォームを革新
アウディはA5、Q5、A6、A6 e-tron、Q6 e-tronの5モデルに大規模なハード＆ソフト面の刷新を実施すると発表しました。新しいESCシステムの「dynamic plus」モードやA6には初採用のデジタルマトリクスLED、進化した運転支援、4Kドラレコ、AI音声アシスタント、内装UI刷新など、業界をリードする多面的な改良が盛り込まれ、年次改良を超えたブランドの方向性そのものを再定義するものと思われます。
電動モデルは回生ブレーキのみで完全停止でエネンルギー回収率向上
アウディは電動モデルのPPE（Premium Platform Electric）およびエンジンモデルのPPC（Premium Platform Combustion）を採用する主要5モデルに対し、モデルライフを通じて最新機能を届ける大幅なアップデートを実施。対象はA5、Q5、A6、A6 e-tron、Q6 e-tronとなり、走行性能、運転支援、室内体験、照明技術、エンタメ機能など、実質的に車両の総合性能を底上げする内容だ。
走行性能では、新たに設定されるdynamic plusモードが象徴的だ。S5とS6 e-tronに採用され、S5では標準のクワトロスポーツディファレンシャルとブレーキトルクベクタリング、S6 e-tronでは電動クワトロとブレーキトルクベクタリングを組み合わせ、スポーツESCが制御されることで、意図的なオーバーステアやドリフトも可能とする。アクセル操作への応答性も鋭さを増し、シフトライトやタコメーターを表示する専用画面がドライバーを刺激する。さらにdrive select assistantが加わり、走行状況とドライバーの運転特性を解析し、適切なドライブモードを自動調整する。
一方、電動PPEモデルでは回生ブレーキシステムが進化し、停止までフリクションブレーキへ移行せず、一貫してモーター回生で減速できるようになった。停止時の滑らかさと快適性が増すだけでなく、回収エネルギーの増加で効率と航続距離が向上する。
交通標識を認識する運転支援と曖昧な目的地検索にはAIで対応
運転支援では、高度化したアダプティブクルーズアシストが高速道路での車線変更をサポート。ウインカー操作をトリガーにして自動ステアリングが働く仕組みだ。市街地では交通標識認識能力が拡張され、速度標識の自動順守に加え、停止標識、不整地警告、優先道路ルールをルートデータを基に判断し、自動減速する。
駐車支援では「park assist pro」がより高度化。最後の50mを自動操舵で戻るリバースアシスト、狭い空間での接触回避を助けるマヌーバーアシスト、さらに最大5件・200mの駐車動作を記憶し私有地で自動実行する学習パーキングシステムなど、使い勝手を大幅に向上。スマートフォン操作でガレージ駐車が可能となる。
照明技術の進化も大きなトピックで、A6にデジタルマトリクスLEDヘッドライトを初採用。マイクロLEDによる高解像度制御で、悪天候時の視認性向上や、レーンガイド光、ドリフト警告の矢印、氷結注意シンボル、歩行者マーキングライトなど多彩な投影機能を備える。加えて、48セグメントのデイライトと198セグメントのOLEDリアライト2.0により、前後ライトは多数のアニメーションと8種類のデジタルライトシグネチャーが表現可能だ。
内装では新しいマルチファンクションステアリングを導入。従来のタッチ式から物理操作に変更し、A6（PPC）には新設計のフロントシートが与えられ、ホールド性と快適性が高まった。UIはQ3と同じシンプルな構成となり、バーチャルコックピットは3種類の表示モードを備える。スマホとの連携も深まり、ナビ・メディア・通話情報をMMI・助手席ディスプレイ・バーチャルコックピットへ同時に反映できるようになった。
また、AIによるAudi assistantはログブックデータを基に車両質問へ回答し、ChatGPT連携により曖昧な目的地検索にも対応。運転支援の音声操作や、行動パターンを学習して自動化するルーティン設定など、車内の知的体験を拡張している。
体験価値として、照明・音響・マッサージ・空調を統合するエクスペリエンスワールドが導入され、10～20分の没入的な空間を演出。EVでは仮眠向けのPower Napを追加。インカーゲームの充実も図られ、Bluetoothコントローラーやワイヤレスヘッドフォンに対応しゲームなども楽しめる。
【AMWノミカタ】
今回の大幅なアップデートは、アウディが“走行性能の深化”と“デジタル体験の高度化”を同時に推し進める姿勢を鮮明にしている。単なる年次改良ではなく、ブランドの方向性そのものを再定義するものだ。
新しい機能の中で、聞き馴染みのないものが「Power Nap」である。Napとは「昼寝」を意味するが、この機能は照明（アンビエントライト）、サウンド、空調設定が“落ち着いた快適な仮眠環境”に統合調整されるとともにシートが仮眠に適した角度へ滑らかに移行し、姿勢保持をサポートするという。無駄と想われる充電時間を快適な休憩時間に変えるEVモデルならではの装備と言えるだろう。
Audi assistantがChatGPTと連携したのも注目の点である。曖昧な目的地検索を可能にするというが、うろ覚えの固有名詞や、間違った地名の読みを修正してくれるのであればかなり役に立つのではないだろうか。
