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最高速度333.642キロをマークする「4ドア」スカイラインGT-R! 慎重派チューナーがエアフロレスにこだわる理由とは

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TEXT: 増田髙志  PHOTO: GT-Rマガジン編集部

好みや理想を具現化できた快適で速い4ドアRの存在

 振り返れば数え切れないほどの魅力的なGT-Rを仕上げてきた塚田氏の心に残る1台とは? 自分自身の好みを追求した、まさにRの理想像を具現化した究極の作品だ。

 それがR32をベースに普段使いも難なくこなせて、エンジンにも乗り手にもストレスなく高速巡航が行えることを狙ったクルマだ。そのためにボディ形状は大胆にも4ドアセダンとする。さらに排気量は3Lオーバー。とにかく独創的だ。

 作り始めたのは1993年。4ドアのGTS-4を使ってGT-Rのフォルムを再現していった。特にリヤフェンダーの膨らみには苦労したと言う。ボディだけでも製作には1年が掛かった。クーペとセダンの違いを感じさせないように仕立てた、違和感のないボディラインが努力の結晶だ。

 とにかくトルクを稼ぎたかったので、エンジンはオーストラリアで使われていたRB30のエンジンブロックを流用する。ボア87φ、ストローク90mmの3.2L仕様として、RB26のヘッドをドッキングさせた。鍛造ピストンにチタンコンロッド、フルカウンターのクランクはアメリカのブライアン・クロワー社にオーダーしたワンオフ品だ。

 シリンダーブロックにはアダプターを使って4WD用のオイルパンが付くようにしている。そのため通常のRB26よりも約3cm高い。ボンネットのバルジはタペットカバーとの干渉を防ぐために設けられた3.2L仕様の証なのだ。

 増えた排気量はトルクをみなぎらせ、ファイナルをノーマルの4.1から、ハイギヤードの3.5に変更しても存分に力を発揮した。ハイギヤード化は回転を上げなくても速度が出る。塚田氏が排気量を上げた一番の理由がここにある。例えば260km/hを出す場合、ファイナルが1.4だと7,000rpm回さなければならないところを、3.5ならば6,000rpmで済む。この1,000rpmの違いは大きい。

 わずかに思える回転差だが、エンジン回転数が高いと振動やフリクションロス、それに油温の上昇とあらゆる負担がエンジンにのしかかる。ドライバーにとっても騒音などのストレスを受ける。回転数を抑えればエンジンの耐久性も上がるし身体にも優しい。つまり「快適で速い」が実現できる。

 カムはIN/EX共に280度でリフトは11.3mm。低速から中速域で、いかに空気を燃焼室に多く取り入れるかを追求したプロフィールだ。塚田氏にとってハイカムは下からレスポンスをよくするために欠かせないパーツ。バルタイもIN側は早く開けてハイカムのメリットを最大限に引き出す。当然、閉じるのも早くなるので、そこはHKSのVカムを使って適正に調整する。

 メインインジェクターを800ccに換えて、燃料ポンプはボッシュの強化品を2連装。できるだけ燃圧を上げて、少しでも多くの燃料が噴射できるようにしている。

 タービンはGT2540のツイン仕様でブースト1.4kg/cm2。加速体制をとっている2,000~4,000rpmの間ではNOSを使って、ほんのわずかな力の滞りにも対応している。とにかく全域でトルクフルだからどんなシチュエーションでも俊足だ。

柔軟な発想と実走でのセッティングが肝心

 雑誌主催の最高速テストでは、タービンをTA45シングルに換えてトップスピードを狙った。NOSは使わずにブースト1.6kg/cm2設定で、あっさり333.642km/hをマーク。1996年10月のことだ。

 理想のGT-Rを生み出した塚田氏は、そのテイストを使ってサーキットのタイムアタック用の車両も製作した。排気量は2.8Lに留めたものの、GT2540タービンをはじめとしたカムなどのパーツ類はほぼ一緒。空力を重視したため、フロントまわりのダクトなどの開口部は極力減らしていった。そのためラジエータはトランクに移設。この柔軟な発想を取り入れたBNR32も、とても塚田氏らしい仕立て方だ。

 2017年に顧問となり仕事量をセーブしているものの、その内容やチューニングの考え方は一切変わらない。「レスポンス重視のエアフロレスで、ピークワパワーが多少犠牲になろうとも、中間域で素早くトルクが沸き起こるようにしていきます。シフトアップしたときのタイムラグは、できるだけなくしたいですからね」

 最終的には塚田氏が行う実走セッティングにすべてが委ねられる。走行中に一人でもデータが変更できるように、針金で工夫したパソコンは必需品だ。

 どこか1箇所をよくすると周辺が変化するので、そこも見過ごさずに整える。その連続だ。オーナーには感じないかもしれないが、この手間を惜しまないことが塚田氏の矜持だ。それは心に残る1台だろうが、ユーザーカーだろうが、決して揺らぐことはない。

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  • 塚田晴良代表
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