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「壊れる伝説」のフェラーリ「456GT」に乗ってみた! 旧き佳き血脈を感じさせる本物の跳ね馬でした【旧車ソムリエ】

「壊れる伝説」のフェラーリ「456GT」に乗ってみた! 旧き佳き血脈を感じさせる本物の跳ね馬でした【旧車ソムリエ】

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖

  • 軽量化と高剛性の両立を模索した結果、412時代を大きく下回る1690kgの車両重量を実現
  • 先進性やスポーツ性を明確に打ち出していた
  • リトラクタブルヘッドライトを採用していた
  • 巨大なエンジンカウルはハニカム構造のコンポジット製
  • ボディのアルミパネルと鋼管フレームを溶接するため「FERAN」と呼ばれた中間材を採用
  • ホイールベースは412時代より10cmも短い2600mmでアジリティを高めていた
  • ピニンファリーナ所属スタイリストのピエトロ・カマルデッラがデザインワークを担当
  • フェラーリ456GTのテールランプ
  • それまでのフェラーリ製ストラダーレでは若干プライオリティが低かったクオリティについても向上を目指したものの、新機軸と先鋭的なテクノロジーを大量投入した456GTは、次から次へと初期トラブルに見舞われてしまった
  • フェラーリ456GTのエキゾースト
  • フェラーリ456GTの給油口
  • キャビン内は1960年代の「スーパーアメリカ」を90年代に昇華させたようなゴージャスきわまるデザイン
  • ヴェリア社製メーターは昔ながらの繊細な美しさを感じさせる
  • 四角い空調アウトレットの下に並ぶ、5個のメーターとピニンファリーナの「フラッグ」
  • 456GTで初採用された6速MTのシフトレバー
  • フェラーリ市販モデルでは初の採用となる6速マニュアルトランスミッション
  • ドライバーシートの左側にサイドブレーキ
  • 250GT 2+2から伝承された車名の「2+2」が公式に使用されたのはデビューからしばらくの間だけで、ほどなく「456GT」に統一
  • 黄色味の強いベージュのコノリー社製レザーハイドを組み合わせたインテリア
  • 2+2の4座席フェラーリの伝統をくむ
  • リアのトランクリッドの裏側までゴージャスな仕立て
  • 456GTのトランクルーム
  • 完全新開発となった「ティーポF116」型65度V型12気筒5473ccのエンジンは、当時のフェラーリ市販モデルの中では最強となる442psを発生
  • FRフェラーリの名作「365GTB/4デイトナ」を意識した、アグレッシブなファストバックスタイル
  • 1992年にデビューしたフェラーリ456GT 2+2

1994年式 フェラーリ456GT

「クラシックカーって実際に運転してみると、どうなの……?」という疑問にお答えするべくスタートした、クラシック/ヤングタイマーのクルマを対象とするテストドライブ企画「旧車ソムリエ」。今回セレクトしたクルマは、90年代フェラーリのフラッグシップ「456GT」である。

21世紀を見据えた、新世代のV12・4シーターフェラーリ

1985年以来、フェラーリのフラッグシップであったゴージャスな2+2ツアラー「412」は、もともと1972年にデビューした「365GT4 2+2」のマイナーチェンジ&排気量拡大版。誕生以来20年の時を経て旧態化が否めなかったのだが、1992年にデビューした456GT 2+2はそんなイメージを一変させることになる。

1960年に「250GT 2+2」が登場して以来、それまでの4座席モデルはやや旧式なメカニズムで構成されていた、あるいは2シーター版の先進技術を後追いで踏襲したコンベンショナルなモデルだったのに対して、456GTではトランスミッションとディファレンシャルをまとめて後輪側に置いたトランスアクスルのレイアウトや、412よりも10cmも短い2600mmのホイールベースがもたらすアジリティなど、先進性やスポーツ性を明確に打ち出していた。

また、ボディのアルミパネルと鋼管フレームを溶接するため「FERAN」と呼ばれた中間材を採用。さらに巨大なエンジンカウルをハニカム構造のコンポジット製とするなどのデバイスで、軽量化と高剛性の両立を模索した結果として、412時代を大きく下回る1690kg(本国仕様のメーカー公表値)の車両重量を実現した。

一方、完全新開発となった「ティーポF116」型65度V型12気筒5473ccのエンジンは、当時のフェラーリ市販モデルの中では最強となる442psを発生。フェラーリ市販モデルでは初の採用となる6速マニュアルトランスミッションとの組み合わせで、最高速300km/hをゆうに超える動力性能でも世界を圧倒した。

2+2とは思えないほどにスタイリッシュなボディの製作は、この時代のフェラーリでは常道であるカロッツェリア・ピニンファリーナによるもの。所属スタイリストのピエトロ・カマルデッラがデザインワークを担当し、FRフェラーリの名作「365GTB/4デイトナ」を意識した、アグレッシブなファストバックスタイルとなった。

くわえて、発表時のカタログや公式ドキュメントには「Ferrari」の左右に、小さな「MODENA」と「ITALIA」の文字があしらわれた、1960~70年代の旧いロゴも採用。一説によると、これらはすべてかつての栄光を前面にアピールしようとした、ルカ・ディ・モンテゼーモロ会長の「鶴のひと声」で決定したとも言われている。ただし、250GT 2+2から伝承された車名の「2+2」が公式に使用されたのはデビューからしばらくの間だけで、ほどなく「456GT」に統一されることになる。

そしてモンテゼーモロ会長は、それまでのフェラーリ製ストラダーレでは若干プライオリティが低かったクオリティについても向上を目指したものの、新機軸と先鋭的なテクノロジーを大量投入した456GTは、次から次へと初期トラブルに見舞われてしまう。

とくにデビューの4年後、1996年に追加設定された4速ATモデル「456GTA」では、英国リカルド社と共同開発したとされるオートマティック変速機に重篤なトラブルが頻発。456GT全体のイメージを、少なからず損ねてしまうことになった。

それでも、内外装をリフレッシュしたビッグマイナーチェンジ版として1998年にデビューした「456M GT/456M GTA」では、懸案の信頼性もかなりのレベルまで向上していたとは言われながらも、2003年に生産を終えるまでにラインオフした台数は、456GTで1548台、456GTAでは403台。456M GTは688台、そして456M GTAが650台。つまり総計でも3289台という、11年間の長い生産期間を勘案すれば若干少なめな数字に終わったのだ。

むせかえるほどに濃厚な、古典的FRフェラーリの味わい

フェラーリのマラネッロ本社に面する有名なテストコース「ピスタ・ディ・フィオラーノ」でのラップタイムでは、同時代のミッドシップのスーパースポーツ「512TR」をも凌駕したという456GT。でも誕生から30年を経た今では、その走りの本質について取り上げられる機会は皆無に等しいようだ。

また、マイナートラブルにまつわる噂ばかりが先行していることから、筆者自身にとっても約30年ぶりとなる456GTのドライブは、期待と不安が入り混じったものとなった。それでも、エレガントな濃紺のボディによく似合う、黄色味の強いベージュのコノリー社製レザーハイドを組み合わせたインテリアに身を収めると、自然に心が躍ってくる。

キャビン内の雰囲気はクラシック・フェラーリ、とくに1960年代の「スーパーアメリカ」を90年代に昇華させたようなゴージャスきわまるデザインながら、この後のフェラーリのキッチリしたつくりとは異なり、とくに年月を経るとかなりヤレ感が出てしまう。

でも、そのハンドメイド感がたまらなく魅力的であることも間違いない。四角い空調アウトレットの下に並ぶ、5個のメーターとピニンファリーナの「フラッグ」。コンソールボックス側に設けられたオーディオなど、あらゆる部位が美しくてクラシカル。

後継である「612スカリエッティ」の、ちょっと子どもっぽさを感じさせるデザインの計器盤とは打って変わって、こちらのヴェリア社製メーターは昔ながらの繊細な美しさを感じさせるなど、すべてがフェラーリを知り尽くした、大人のエンスージアストの審美眼にも耐えうるものである。

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