レースのためのホモロゲートモデル、コルベットL88
一定以上の量産がデフォルトであるアメリカ旧ビッグ3の生産モデルのなかでも、歴代のシボレー「コルベット」は特別なスポーツカー。なかでも段違いのハイチューンが施された限定モデルや、レース参加のためのホモロゲートモデルは現在の国際クラシックカーマーケットにおいても、驚くほどの高価格で取り引きされています。今回のオークションレビューで取り上げるのは、そんな特別中の特別なコルベットのひとつ。2025年1月25日にRMサザビーズ北米本社がアリゾナ州フェニックス市内で開催したオークション「ARIZONA 2025」に出品されていた「コルベット スティングレイL88」のあらましと、注目のオークション結果を紹介します。
伝説のエンジニア、ゾーラ・アーカス・ダントフの手がけたL88とは……?
シボレー「コルベット スティングレイL88」は、「コルベットの父」ともいわれるエンジニア、ゾーラ・アーカス・ダントフが手がけた、もっとも有名な「ホモロゲーションスペシャル」。1967年から1969年まで、ショールームで購入できるC3世代のコルベットの中でも、特別に「ワイルドな」モデルだった。スペックシートの上では430psを標榜して販売されたこの公道用レーシングカーは、実際には推定550psを発生するいっぽうで、最低でも103オクタンのハイオク燃料を必要とした。
このモデルイヤーで生産されたのはわずか20台と、極めて限られた台数しか生産されなかった「L88」は、今でもアメリカのスポーツカーの中で高く評価され、垂涎の的となっている。
もともと「Can-Am」選手権や「FIA-GT」、そして「NASCAR」のコンペティションで使用するために開発されたホモロゲーションモデルである「L88」オプションパッケージは、鍛造インテークとCan-Am仕様のアルミニウム合金製シリンダーヘッドを備えた特別な427キュービックインチ(約7.0L)・ビッグブロックV型8気筒を中核とする、包括的なレーシング装備の一式が備えられていた。
このL88パッケージを注文する勇気のあった顧客には、パワーアシストつきの「J56ヘビーデューティブレーキ」、「F41ヘビーデューティサスペンション」、「G81ヘビーデューティポジトラクションディファレンシャル」、そして特別な「カウル・インダクション」エンジンフードも与えられた。
モータースポーツのために造られた特別なモデル
そしてこのモデルの心臓、デニー・デイビスが設計したL88エンジンは、鍛造スチール製インテークと圧縮比12.5:1の強化鋳鉄製ブロックを採用。アルミニウム製シリンダーヘッドには、大型化された吸排気バルブ、硬化プッシュロッド、熱処理されたボールスタッドに固定された特製ロッカーアーム、高強度リテーナーつきの強化バルブスプリングが装着されている。
L88の特徴であるゴツゴツとしたアイドリングは大地を揺るがすほどのもので、このモデルのカムシャフトは、歴代のシボレーの市販エンジンのなかでもっとも過激なものである……と、いくつかの出版物が指摘している。
つまりは、モータースポーツのために創られた特別なC3コルベットだったのだ。






















































































































































































