プレゼン現場で初公開された新たな販売体制
プレゼンテーションに先立って会場で流された動画では、東京都内の各名所や雪の金沢など、現代の日本を感じさせる情景をバックに快走するリリックの姿が映し出されているが、実際に日本国内での試験走行は、2023年末に国内導入を発表した直後から始まっていたとのことである。
さまざまなプロセスを経て、ついに日本でも公式の場で見ることのできたリリックは、キャデラックらしくゴージャスかつスタイリッシュなSUVといえよう。
エンジン冷却用のラジエターを必要としないEVながら、フロントフェイスには伝統的な意匠のダミーグリルが設けられる。そこには幾何学模様のようなデザインを施されたブラッククリスタル調のデコレーションパネルを据え、その両サイドに縦型のシグネチャーLEDヘッドライトが配される。これが今後のキャデラックEVのアイコン的スタイリングになるという。
プロフィールは、通常のワゴン型SUVとクーペSUVの中間のごときスリークで流麗なもの。全長約5mのサイズをうまく生かしているように感じられた。また、後方へなだらかに下降するクーペ的なルーフラインと、1967年式キャデラック「エルドラド」へのオマージュという、ルーフラインのエッジを強調する意匠のテールランプによって完結するテールエンドまで、デザインが行き届いているかに見えた。
いっぽうこの日の展示車両のインテリアは、漆黒のボディカラーと同系のモノトーンでコーディネートしたブラックの本革レザー。ただしこれはオプションで、標準仕様では動物由来ではないサステナブルな素材「インタラックス(Inteluxe)」となる。くわえて、ドアパネルには、きらめくような光の動きを生み出すレーザーエッチングのバックライトを配し「KOMOREBI(こもれび)」と名づけている。
ところで、GMでは2020年の段階で、2035年までに乗用車をBEV、そしてFCVなどによりゼロエミッション化すると宣言していた。そして、その最前線となるプレミアムブランドのキャデラックは、30年までに車両をすべてBEV化すると公式に宣言している。
サプライズ展示されたコンパクトなBEVの正体とは
じつは今回も「リリック発表会」ではなく「キャデラック ジャパン EVアナウンスメント」と銘打たれ、リリックお披露目とプレゼンに使われたホールの隣、パーテーションの向こう側のスペースでは、2026年に日本国内導入が予定されている、よりコンパクトなBEV「オプティック(OPTIQ)」もサプライズとして展示されていた。
さらには、2023年12月に本国デビューした3列シート7人乗り電動SUVの「ヴィスティック(VISTIQ)」や、2025年1月末に広報写真と概要が公表されたばかりである、キャデラック史上最速のモデルであり、615psのパワーと880Nmのトルクを発生し、0-60mph(約96km/h)加速は「ベロシティマックス」モード使用時に3.3秒を記録する「リリックV」なども、追って日本導入されることになると言明された。
なお、3月8日より受注が開始された日本仕様のキャデラック リリックはすべて右ハンドルで、販売価格は1100万円(消費税込)。在庫はすべてGMジャパンが保有し、それを国内各地のキャデラック正規代理店が仲介する新しい販売手法「エージェントモデル」でカスタマーに販売するとのことである。
上記の価格は日本全国統一で、これまでのセオリーでは各ディーラーの裁量で行われる値引きなどもないそうだが、そのぶんプライス設定は1500万円前後(?)と噂されていた事前の予測を、大きく下回るものとなった。
こうして、クルマ/販売体制とも満を持したかたちで日本上陸を果たしたリリックながら、そのかたわらでバッテリーEV自体のあり方が大きく変容していること。あるいは、多くのコンポーネンツを海外サプライヤーに頼っている生産体制ゆえに、合衆国の現政権の関税政策の進行によっては現在の価格維持にも何らかの影響が出るかもしれないことなど、まだまだ注目すべき面は山積しているかに思われる。
でも、まずはリリックというキャデラック自信作のできばえを、日本の公道上で試してみたいものである。

























































