ZZトップがステージを熱くする“音楽の街”ナッシュビル
メインイベントの会場となったのは、NFL(ナショナルフットボールリーグ)テネシー・タイタンズの本拠地、ザ・コロシアムという巨大なスタジアムである。実は、クルマが並べられたのはスタジアムの外側だった。スタジアム内には音楽イベントのブースが作られていて、コルベット・アニバーサリーのためにここで演奏をしたのは、なんとZZトップであった。個人的に好きだったZZトップの生演奏を聴けるとあって、当時はかなり興奮したものだ。
その演奏に先立ち、夕方から(ZZトップの演奏は夜)ナッシュビルのダウンタウンを、年代順に並んだコルベットの車列がパレードした。ご存知の人も多いだろうが、ナッシュビルは「ミュージックシティー」の異名を持つ音楽の街としても有名である。エリック・クラプトンも使う有名なレスポールを生み出した、ギブソン・ギターの本拠地でもあるのだ。そんなわけで、コルベットのイベント会場にもギブソンのブースがあり、ファンは自由にギターに触れることができた。音楽マニアならばそちらの方に目が行くかもしれないと思ったものだ。
このイベントの主催者は、もちろんコルベットを生み出したGMだ。キャラバンを組んでナッシュビルを訪れたのは、皆熱心なコルベットオーナーたちである。それは全米各地に点在するコルベットオーナーズクラブが協力してメンバーを募ったもので、同時にナショナル・コルベット・レストアラーズ・ソサエティが強力なバックアップ体制を整えていた。このイベントに全米から集まったコルベットはおよそ1万台。強力なバックアップがあったので、安心して長旅ができた。
歴代モデル49台のほか15台のコンセプトモデルを展示
会場イベントは、歴代コルベット49台が(1983年は生産されていないため50周年だがクルマは49台となる)年代順に並べられ、希少なコルベットやレース車両の展示もあった。なかでも必見だったのは、GMがヘリテージセンターに収蔵している、日頃見ることができないコンセプトモデルの数々が一堂に展示されたテントだ。
有名なスティングレイ・レーサーから、1970年代に模索されたミッドシップ・コルベットなど総計15台が展示された。ミッドシップ・コルベットは、量産型として最新のC8で結実したが、状況さえ許せば1970年代に実際の生産型が誕生したかもしれない(現実的にほぼ生産直前まで行ったという)史実がよくわかる。
また、コルベットには2種のロータリーエンジン搭載車も存在した。そのうちの1台が会場に展示されたが、このロータリーエンジンはなんと2基の2ローターエンジンを、90度の位相をつけて配置したものだった。このレイアウトでアメリカの特許を取得しているそうだ。
残念なことに、ちょうど石油ショックが世の中を襲い、燃費の悪いロータリーの開発にストップがかかったことで、このクルマの命運も尽きた。ちなみにGMは2ローターエンジンをシボレー ヴェガに搭載して量産化の計画を立てていた。そして、RC2-206と呼ばれた2ローターエンジンを搭載したコンセプトカーがあり、「XP895」と名付けられたそのクルマは、なんとポルシェ「914」のプラットフォームを使っていた。
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