GT3レース通算500戦の名車が世界の名門サーキットで集中テスト
ポルシェは2026年シーズン向けに進化版「911 GT3 R」を発売しました。4.2L水平対向6気筒エンジンは最大565psを維持しつつ、空力やサスペンションを最適化。新たにフロントフェンダー上のルーバーや強化型スワンネックウイングを採用し、ノンプロドライバーでも扱いやすい挙動を追求しています。すでに今シーズンのニュルブルクリンク24時間レースにも投入され、その活躍に多くの目が注がれました。
空力と足まわりのバランスを調律したアップデートを敢行
カスタマーチーム向けGT3マシンの、ポルシェ「911 GT3 R」の2026年モデルが正式に発表された。2023年にデビューした現行型は世界中で500戦以上に参戦し、数多くの勝利とタイトルを獲得。その戦闘力の高さは実証済みだ。
新型911 GT3 Rは現行型をベースに、空力性能とサスペンションの最適化を中心とした改良を実施。最大の特徴はフロントフェンダー上に追加されたルーバーだ。フロントの空力効率の向上を達成し、ブレーキング時の前傾姿勢を軽減。ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションにはアンチダイブ機能を持たせ、減速時の姿勢変化を抑えることで安定感とコントロール性が高まった。
リアまわりでは4mmのガーニーフラップ付きスワンネック型リアウイングを採用し、空力バランスの調整幅を拡大。フルカバー化されたアンダーボディとマルチリンク式リアサスペンションのアンチスクワット効果向上で、加速時の後傾を抑え、前後荷重の動きを安定させた。さらに新世代のボッシュ製第5世代レーシングABSと組み合わされることで、トータルでハンドリングバランスの引き上げを実現している。
耐久レース仕様パッケージを標準化!チームマネージメント機能も充実
耐久レースでの信頼性向上に向けた改良も多数導入された。電動油圧式パワーステアリングには追加冷却を採用し、長時間の走行やニュルブルクリンク北コースのような過酷な環境下でも一定のステアリングフィールを維持。新しいセラミックホイールベアリングは耐久性と剛性を強化し、ドライブシャフトは独立エア供給による冷却を受けることで、モンツァなどの高速サーキットでも安定性を確保した。リアブレーキの冷却調整機能も高精度化され、デイトナのようなブレーキ負荷の高いコースでは有効となる。
また換気性能を高めたエアベントの採用や、走行データをUSBメモリに直接記録できるRLUシステムの搭載などドライバー環境の改善も施された。ピットストップ中に素早くデータを交換でき、従来のケーブル接続による手間が不要になるなどマネージメント面でも強みを発揮する。
これまでオプションだったセンサーパッケージや耐久パッケージ、ピットレーンリンクパッケージ、カメラパッケージを標準化。レーザー式車高センサー、後方カメラ、燃料充填検知機構などを備え、IMSAやWEC、スパ24時間など主要耐久シリーズの規定に適合している。さらにシリーズ別の特別装備として、FIA LMGT3やIMSA向けには専用ドライブシャフト、NLS向けにはLMGT3同様のプリサイレンサーや調整範囲を広げたウイングステーが用意されている。
パワートレインは現行型と同じ4.2L水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載。最大出力は565psだが、性能はBoP(性能調整)により変動する。既存の992世代ベースの車両に向けてはアップデートキットが用意される。
2024年8月に開発はスタート。ヴァイザッハの施設やセブリング、ポール・リカール、スパ、ニュルブルクリンク北コースなどでテストを実施。2025年4月にヘルベルト・モータースポーツがスパ12時間レースにテスト車で参戦し、ローリン・ハインリッヒ、ラルフ・ボーン、アルフレッド・レナウアーのドライバー陣が総合2位を獲得。信頼性と即戦能力の高さを証明している。

【AMWノミカタ】
現行型GT3 Rは2023年のデビュー以降、ポルシェモータースポーツから顧客チームへ既に106台が供給され多くのレースシーンで輝かしい成績を残してきた。
2026年モデルの改良は空力やサスペンションを中心に細部にわたる。例えば4mmのガーニーフラップは、リアウイングやフロントウイングなどの翼の後端(トレーリングエッジ)に、直角に立てられた小さな板状の部品のことであるが、とくに低速~中速コーナーでのグリップに効果が生まれる。
ホイールベアリングにも耐久性を考慮しセラミック製のものが投入された。フェラーリも先日296 GT3 Evoを、ランボルギーニもテメラリオのGT3モデルを発表。各ブランドの進化が試される来シーズンのレースが楽しみだ。












































