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同年代V8&V12フェラーリがライバルか!? 独立マセラティ時代の最後の古典的スポーツカー「シャマル」の価値を知る

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TEXT: AMW編集部  PHOTO: Bonhams  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

予算1000万円台ならどれを選ぶ? 希少なマセラティとフェラーリ

経営難にあえいでいたマセラティを救ったビトゥルボの究極の進化系として登場したのが、フラッグシップモデルとなる「シャマル」だった。この「シャマル」がボナムズが米国で開催したThe Greenwich Auctionに登場した。巨匠マルチェロ・ガンディーニがデザインを手掛けた総生産数369台の希少なスポーツカーだ。日本からアメリカへ渡った1992年式の個体は、3.2リッターのV8ツインターボエンジンと6速MTを備えている。過激なスペックを誇るシャマルの価値は、同年代のフェラーリの中古車相場と比較しても極めて興味深い。

デ・トマソ時代の集大成となる直線的で張りのあるスタイリングはガンディーニ!

1990年に登場したマセラティ「シャマル」はフラッグシップクーペとして開発された。同社初の量産モデルだったビトゥルボをベースに、ランボルギーニ「カウンタック」や「ディアブロ」を手掛けたばかりの巨匠マルチェロ・ガンディーニによってデザインされている。

ガンディーニが描いたスタイリングは、当時のトレンドを反映した直線的で張りのあるウエッジシェイプを特徴としていた。リアのホイールアーチにはランボルギーニ カウンタックを彷彿とさせる斜めのカットが取り入れられている。マセラティの伝統に則り、イラクやペルシャ湾に吹く熱く乾いた北西の偏西風にちなんで名付けられたこの「シャマル」は、デ・トマソ体制下で発表された最後のモデルでもある。生産期間は1990年から1996年までで、総生産台数はわずか369台という極めて希少な存在だ。

911ターボをも凌ぐ326馬力をV8ツインターボと6速MTのパワートレインで実現

シャマルの心臓部には、マセラティにとって1970年代の「インディ」以来となるV型8気筒エンジンが搭載されている。ビトゥルボのプラットフォームを短縮したシャシーに押し込まれた3.2リッターのV8ツインターボエンジンは、最高出力を6000rpmで326馬力まで発揮する。これは当時のライバルであったポルシェ「911ターボ(964型)」の320馬力や、フェラーリ「348」の300馬力を凌ぐほどの強烈なスペックである。

この強大なパワーは、ゲトラグ製6速マニュアルトランスミッション(6速MT)を介して後輪へと伝えられる。0-60mph(約96km/h)加速は約5.3秒、最高速度は約170mph(約273km/h)に達し、1990年代初頭のスポーツカーとしては一級品の速さを誇っていた。

シャマルはベースとなったビトゥルボ系のシャシーからホイールベースが短縮されており、そこに326馬力のハイパワーが組み合わさったことで、テールハッピー(オーバーステア傾向)なじゃじゃ馬として知られている。現代の洗練されたスポーツカーとは異なり、ターボのブーストが強烈に立ち上がり、重いステアリングとパワーに負けそうになるシャシーをねじ伏せるようなドライビングが求められる。まさにドライバーのスキルが試される、カリスマ性に満ちた1台である。

かつて日本を走っていた走行7万4013kmの個体価値はフェラーリ348や456GTがライバルか?

今回オークションに出品された1992年式の個体は、じつは日本に正規輸入され、長年日本国内で大切に維持されていた履歴を持つ。その後、2018年4月にアメリカへと輸出されたというグローバルな経歴を持っている。

ボディカラーは伝統的なレッドで、大きく張り出したリアフェンダーや角張ったホイールアーチが、この時代ならではの独特のオーラを放っている。室内はブラックのレザーで統一され、ホールド性の高いスポーツシートやウッドのシフトノブ、革張りのダッシュボードに埋め込まれたマセラティ伝統の楕円形時計が、イタリアンラグジュアリーを体現している。当時のソニー製AM/FMカセットプレーヤーが残されている点も、マニアの心をくすぐるポイントだ。

走行距離は7万4013kmを刻んでいるが、直近でメンテナンスが施されており、電子制御ダンパーを備えた独立懸架サスペンションや4輪ディスクブレーキも健在である。ボナムズでは、10万ドル〜12万ドル(邦貨換算約1620万〜1940万円)のエスティメート(推定落札価格)を掲げた。当時の日本における新車価格は1385万円であったが、現在の日本での中古車市場をみても流通量は極めて少なく、それを上回る1700万円前後のプライスタグが掲げられるなど、コレクターズアイテムとしての価値は年々高まり続けている。今回は惜しくも希望価格に届かず流札となってしまった。

ビトゥルボ時代のマセラティ シャマルは維持に手間がかかる一面もあるが、1700万円前後まで高騰した現在の相場を考えれば、まだ現実的な予算で狙える同年代のフェラーリに夢を馳せるのも一興だ。

現在の中古車市場を見渡せば、800万〜1100万円前後で推移するV8モデルのフェラーリ「348」や、900万〜1200万円前後で12気筒の官能を味わえる「456GT」が射程圏内に入る。

「じゃじゃ馬なV8ツインターボのマセラティか、等身大で楽しむV8フェラーリか、それとも優雅なV12フェラーリか」。1990年代のイタリアンロマンを自らの手で操る悦びは格別だ。もしあなたに1000万円台の予算があるなら、ガレージに迎え入れたいのはどの1台だろうか。

※為替レートは1ドル=162円(2026年7月15日時点)で換算

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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

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