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いまこそ振り返る「V12」のメリットと魅力とは? 最初に搭載したのはスーパーカーではなくパワーボートでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: トヨタ博物館/ Ferrari /原田 了/Courtesy of RM Sotheby's

エンツォ・フェラーリも魅了したパッカード・ツインシックス

はじめて自動車にV型12気筒エンジンを導入したモデルは、1916年モデルとして1915年5月に登場した「パッカード・ツインシックス」というのが定説になっている。たしかに、市販乗用車としてはその認識で間違いないが、じつはスピードトライアル車両としては3年前、1913年9月に英国ブルックランズ・サーキット(1907年開設)に登場した英「サンビーム」自社開発のレーシングカーが、初めてV12を搭載した自動車とのことである。

同社の主任設計者、名匠ルイ・コータレンが設計し、彼の妻の愛称から「Toodles(トゥードルズ) V」と名づけられたこのマシンには、排気量9.0Lの60度V12・L ヘッド(サイドバルブのまま吸排気レイアウトのみをクロスフローとしたもの)のエンジンが搭載され、1913~1914年にいくつかの速度記録を達成したという。そして前述のごとく1916年モデルとしてデビューしたパッカード・ツインシックスには、バンク角60度LヘッドのV12ユニットが搭載された。排気量は6950cc、2600rpmで88psを発生したといわれている。

ツインシックスは1923年まで生産。そののち10年のブランクを経て、1933年にはパッカード第2のV12モデル「トゥエルヴ」が誕生。1939年まで生産された。またアメリカでは、パッカードのほかにもキャデラックやリンカーン、オーバーン、ピアス・アローなどにもV12が搭載された。さらにV12ムーヴメントはヨーロッパの高級車にも波及し、英国ではロールス・ロイスやラゴンダ、デイムラーなど、フランスではイスパノ・スイザやドライエなど、そしてドイツではマイバッハが最高級モデル用パワーユニットにV12を選んだ。

ところが第二次大戦後になると、油圧で振動を抑えるエンジンマウントが普及したことで、エンジン自体が発する振動にあまり神経質になる必要性がなくなったため、アメリカではより効率に優れるV8に移行。いっぽうヨーロッパでは、戦後復興のため超高級車の需要が大幅に減少していたことも合わせて、V12エンジンは欧米の自動車界からフェードアウトしてゆく。

こうして乗用車の歴史から姿を消すかに思われたV12に、再びスポットライトを当てたのが、ご存知エンツォ・フェラーリであった。エンツォは若き日に、彼のレーシングスポンサーである男爵夫人から提供された1916年型ツインシックスを走らせる機会があったことから、その素晴らしいスムーズさに感銘を受けたとのこと。そして第二次大戦後、自身のブランドで作る初めてのレースカーは12気筒で行こうと決意し、ジョアッキーノ・コロンボ技師に1.5LのV12エンジンを設計させたといわれている。

その成果として誕生したのが、1947年にレースデビューした「125S」だった。V12エンジンを得たフェラーリは、エンツォのもくろみどおりモータースポーツを席巻。そのかたわら、セレブレティたちの間でもV12フェラーリは「ドルチェ・ヴィータ」の象徴として、特別な存在となっていく。

そしてV12特有のカリスマ性に目をつけたフェルッチオ・ランボルギーニは、フェラーリに対抗するにはV12が必須と判断したことから、自社で開発する初のモデルにもV12エンジンを選択。スーパーカーから高級車までおよぶ1990年代のV12全盛期へと繋がってゆくのだが、そのあたりはまたいつか、別の機会にお話しさせていただくことにしよう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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