クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CLASSIC
  • V12搭載ハイパーセダン「EB112」は幻に! 第2期ブガッティ帝国はなぜ没落したのか、元スタッフが振り返ります【ブガッティ・ヒストリー_03】
CLASSIC
share:

V12搭載ハイパーセダン「EB112」は幻に! 第2期ブガッティ帝国はなぜ没落したのか、元スタッフが振り返ります【ブガッティ・ヒストリー_03】

投稿日:

TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bugatti Automobiles S.A.S.

1995年、ブガッティ2度目の落日

1995年8月末には、1台のEB110SSが日本の鈴鹿1000km耐久レースにエントリーされた。それは一見華やかな話題にも見えたが、実際はその影で撤退の準備が始まっていた。鈴鹿1000kmでエントラント兼ドライバーとなったモナコの若き実業家、現在ではフォーミュラEチームオーナーとして知られるジルド・パランカ・パストール氏に、カンポ・ガリアーノ工場に残っていたEB110用コンポーネンツ、EB110およびEB112のプロトタイプとそのパーツなど、すべての資材が委譲された直後に、ブガッティ・アウトモービリ社およびエットレ・ブガッティ社は閉鎖の憂き目を見たのである。

衝撃の破綻後、イタリア政府の管理下に置かれたブガッティ・グループは、その後長らく再建の道が模索されたが、なかなか光明は見えてこなかった。しかし1998年、当時の取締役会会長であったフェルディナント・ピエヒ博士の主導により、独フォルクスワーゲン・グループがブガッティの商標権および製造販売権を獲得。ブガッティはフォルクスワーゲンの100%子会社「ブガッティ・オトモビル」として第3期を迎えることになる。そののち現在に至る活躍は、AMW読者諸賢ならご存じのとおりである。

いっぽう、かつて威容を誇ったカンポ・ガリアーノ本社工場は、破綻直後の一時期は地元モデナの繊維メーカーが使用権を取得し、改装のうえで新たなファクトリーとして活用されるとの噂も聞いたが、結局のところ現在に至るまで事実上の放置状態となっている。

今でもマントヴァからモデナに向けてアウトストラーダA22号線を走っていると、右手に巨大な工場跡がまるで廃墟のごとく晒されているのだ。

自動車史上最高のブランドと、その文化の再興を目指したアルティオーリ時代の第2期ブガッティ。うたかたの夢のごとく儚く過ぎ去り、深く関わった者の多くは、決して浅からぬ傷を受けることにもなった。

それは極東の一拠点で勤務した筆者も同じことではあったが、その一方で「ブガッティ文化の再興」という壮大なプロジェクトの一翼を、たとえ小さなパートであっても担ったことは、生涯の誇りでもある。

「ヴェイロン」と「シロン」、およびその派出モデルたちを擁して、21世紀ハイパーカーの頂点に君臨する現代の第3期ブガッティは、間違いなく「我々の」第2期ブガッティの遺産から発展したもの。そう確信する資格が、我々にはあると思うのだ。

12
すべて表示
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
著者一覧 >

 

 

 

 

 

ranking

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

 

 

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

ranking

AMW SPECIAL CONTENTS