クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CLASSIC
  • 日産初代「サニークーペ」を約10万円で購入! 35年ぶりにDIYで路上復帰を果たした個体とは
CLASSIC
share:

日産初代「サニークーペ」を約10万円で購入! 35年ぶりにDIYで路上復帰を果たした個体とは

投稿日:

TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循(NAGAO Jun)

  • 1969年式の日産 サニークーペ 前期型とオーナーの佐藤秀一さん
  • 日産 サニークーペ:ボディサイドに配されるエンブレム
  • 日産 サニークーペ:3年ほど前に10万円ほどで譲ってもらったという
  • 日産 サニークーペ:フロントグリルに配されるエンブレム
  • 日産 サニークーペ:リアに「YAMAGUCHI NISSAN」などのバッジが配される
  • 日産 サニークーペ:トランクに配されたサニーのエンブレム
  • 日産 サニークーペ:今回のイベントの1週間前にエンジンを下ろしていたという
  • 日産 サニークーペ:ブラックを基調としてインテリア
  • 日産 サニークーペ:ステアリングは3本スポーク
  • 日産 サニークーペ:ドアトリムは千鳥格子のデザインが配される
  • 日産 サニークーペ:トランクには工具やパーツが満載
  • 日産 サニークーペ:ヒストリックカー・イベントでもなかなか見かけないモデル
  • 日産 サニークーペ:オーナーである佐藤秀一さんの地元のとある会社の敷地内に長い間放置されていた個体だったという

元メカニックであっても蘇らせるのに苦労した初代サニー

20世紀生まれであれば2輪4輪問わず誰でもウェルカム。そんな懐の深い「20世紀ミーティング」に、今回はなんと日産初代「サニークーペ」が登場しました。ヒストリックカー・イベントでもなかなか見かけないこの希少車は、35年ぶりに路上復帰を果たした1台。自らの手で再生させたオーナーに話を聞きました。

発起人は当時高校生⋯地域に根づいたカーイベント

2025年4月13日に新潟県三条市のミズベリング三条で開催された20世紀ミーティング2025春季。これはその名の通り、20世紀生まれであれば2輪4輪ジャンルや国籍を問わずエントリー可能というおおらかなイベント。もともとは2021年に当時まだ高校生だった片桐宏基さんが発起人となって開催した「古き良き5ナンバーミーティング」がそのルーツ。

現在は地元でミュージアムを開設しているKYOWA クラシックカー&ライフステーション内に事務局を置く20世紀ミーティング実行委員会が主体となって運営され、世代を超えてクルマ好きが集まる年に2回の恒例イベントとして地域に定着している。

850万通の応募から誕生した車名を冠したサニーに遭遇

会場に集まったエントラントは2輪・4輪合わせて約160台と、なかなかの規模。古くは戦前の日産「ダットサン」から1997年式のいすゞ「エルフ」、ホンダ「スーパーカブ」からミツオカ初代「ビュート」と、毎回お馴染みのクルマと初参加のクルマとがジャンルを問わず程よくバランスされ、来場者を飽きさせないのがこのイベントの美点だ。今回もイベント初エントリーというクルマも多く、来場者から注目を集めていた。そんな初参加組の1台が、日産初代「サニークーペ」である。

1966年、日産「セドリック」と「ブルーバード」の下の大衆車クラスに新たに加えられたのが、「ダットサン・サニー」である。サニーの車名は、発売に先駆けて日産が公募した車名キャンペーンの結果を踏まえて決められたもの。当時は戦後のモータリゼーションの胎動期。世間の新型小型車に対する期待も大きくキャンペーンには850万通もの応募があったと言われた。

発売前から大きな話題となっていたサニーは、スタンダード41万円、デラックス46万円という手頃な価格、そしてデザイン的にも機構的にも手堅くまとめられた質実な仕上がりで、すぐにベストセラーとなった。そしてこのすぐ後にデビューするトヨタ・カローラとともに”マイカー時代”を牽引する立役者となるのである。

初代は実用に徹したモデル

デビュー当初は2ドアセダンのみだった初代サニーだが、デビュー翌年の1967年には4ドアセダン、1968年にはクーペを追加。ミッションはデビュー時は3速コラムM/Tのみだったが、後に4速フロアM/Tや3速A/Tが追加されるなど、そのバリエーションを着々と増やしていった。

しかし我が国を代表する大衆車でありながら、ヒストリックカー・イベントなどではB10の形式名で知られる初代サニーは比較的少数派だ。スポーツグレードのGXがラインナップに加わり、モータースポーツの分野でも活躍した2代目以降に対し、初代はあくまでも「実用大衆車」としての本来の任務を全うし、その多くは静かに消えていったのだろう。

マイナーな初代サニークーペと奇跡の再会

サニークーペといえば、マイナーツーリングレースで無敵を誇った2代目、B110型の印象が今なお強烈であるが、会場で出会ったのは初代B10型サニークーペである。ヒストリックカー・イベントでもなかなか見かけないモデルだけに興味をそそられ、オーナーにお話を伺ってみた。

「1969年式の前期型です。法規上はこのモデルまでがシートベルト無しで許された世代」

と語るのは、山形から参加した佐藤秀一さん。

「以前は日産 R32型スカイラインGT-Rに乗っていました。あと、AE86も2台所有したり」

とその車歴を聞けばヤングタイマーが多いようだが、この初代サニークーペに乗るようになったきっかけは?

「地元の、とある会社の敷地内に長い間放置されていた個体だったんですよ。ずっと気になっていて、3年ほど前に10万円ほどで譲ってもらい、路上復帰に漕ぎ着けました」

とのこと。じつに35年ほど放置されていたというサニークーペ。佐藤さんはもともとメカニックの仕事をされていたそうだが、それを持ってしてもなかなか手強い相手だったという。

苦労の連続を乗り越えた個体

「ヤフオクで手に入れたミッションに丸ごと交換もしました。パーツには苦労しています。ロングセラーのA型エンジンですから、後年のB110のキャブや燃料ポンプなど、互換性のあるものもあるんですが……。ヘッドガスケットやら水まわりやら、年がら年中トラブルシューティングに明け暮れました。じつは今回のイベントの1週間前にもエンジンを下ろしていたんですよね(笑)」

と語る佐藤さん。トランクには工具やパーツが満載で、そのご苦労も偲ばれる。何度も諦めかけたというが、それでも見事路上復帰を果たし、現在では近隣のヒストリックカー・イベントにも参加するまでに至った初代サニークーペ。佐藤さんの熱意と貴重な出会いに感謝であります。

>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)

すべて表示
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
著者一覧 >

 

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

人気記事ランキング

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

AMW SPECIAL CONTENTS