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ニュルブルクリンク仕込みの安定感!STIのコンプリートカー「S210」はスペック値より“真の速さ”を優先

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TEXT: 斎藤 聡(SAITO Satoshi)  PHOTO: 小林俊樹(KOBAYASHI Toshiki)

  • S210:随所にS210のエンブレムを配する
  • S210:フロントはブレンボ製6POTブレーキキャリパーを装着する。ブレーキのコントロール性が高く、流用チューンではできないレベルだ
  • S210:フェンダートリムは、ホイール内の空気を排出できるように負圧を発生させる
  • S210:フェンダートリムは、ホイール内の空気を排出できるように負圧を発生させる
  • S210:500台限定で発売。車両本体価格は870万円
  • S210:フロントフェンダーにロゴを装着。ダクトからホイールハウス内の空気を抜く
  • S210:サイドスカートはSTI製を装着
  • S210:専用設計の4本出しマフラーを採用
  • S210:500台限定で発売。車両本体価格は870万円
  • S210:リヤアンダーにもSTI製のエアロを装着
  • S210:スワンネックタイプのリヤウイングはSTIだが、汎用タイプ
  • S210:前後ホイールで異なるリム形状を採用したことで、内輪のグリップ力を積極的に使うセッティングを実現
  • S210:ストラットタワーバーにしなりと入力の減衰機能をもたせたフレキシブルタワーバー
  • S210:エアクリーナーボックの内部の形状も変更して、エンジンレスポンスが向上している
  • S210:ダッシュボードやドアトリムなどに専用ステッチを施す
  • S210:レカロー製カーボン・パワーシートは標準装備
  • S210:足まわりは無闇に固めず、しなやかに動くサスペンション
  • S210:スタビリティが高く、しかしノーズの入りも良好
  • S210:前後ホイールで異なるリム形状を採用したことで、内輪のグリップ力を積極的に使うセッティングを実現

300ps/375Nmの数値だけでは語れない走りの質感と速さ

トヨタ・ホンダ・日産・スバルといった4つの自動車メーカー直系のチューニングメーカーのことをワークチューンと呼び、「TRD」、「無限」、「NISMO」、「STI」とお馴染みのブランドがあります。これらのメーカーが、自動車メーカーのオプションパーツカタログの枠を越えたアイテムや手法を凝らしたデモカーの試乗会をモビリティリゾートもてぎ南コースで行ないました。今回はSTIのコンプリートカー「S210」を試乗した印象を報告します。

8年ぶりの国内向けSTIコンプリートカーはSシリーズらしい大人の味付け

かつてのWRC参戦、近年ではスーパーGTへの参戦やニュルブルクリンク24時間レースへの参戦など、スバルのモータースポーツへの参画やパーツ開発及び販売を担当する「STI(スバルテクニカインターナショナル)」、文字どおりスバルのワークス部門だ。

S210は、現行VBH型WRX S4 SportsR EXをベースにこれまでSTIが培ってきたノウハウを注ぎ込んで作り上げたコンプリートカー。2025年の東京オートサロンで発表され、500台限定で発売されたが終売。すでに新車購入はかなわないが、どんなクルマだったか、レポートしてみたいと思う。ちなみにSTIのコンプリートモデルとしては、2019年発表の北米向けS209から6年、国内向けは2017年登場のS208以来8年ぶりとなるSシリーズである。

パワースペックは、最高出力300ps/5700rpm、最大トルク375Nm/ 2000‐5600rpmを発揮。

エンジンの開発では速さを追うのではなく、“乗り味を良くすること”を追求したのだという。発進からクルージング、そこからの加速などあらゆる場面で唐突さを一切なくしアクセル操作に対するトルクのレスポンスを作り込んだ。

実際に試乗してまず感じたのもそのことだった。驚くほど速くはないが、スムースで力強い。発進時のタイヤを蹴り出しに力強さがあり、軽々と加速していく感覚がある。300ps/375Nmのパワー&トルクをいわれるとそれなりに身構えてしまうが、むしろベース車のほうが速さ感は強いのではないか。そのように感じてしまうほど、S210は唐突な動きをなくしアクセル操作に素直にトルクがルいてくる。

コーナー立ち上がりでは、アクセルを踏み込んだところからクルマを前に押し出すように加速しそのまま鋭い加速へつつながっていく。中高回転域では電動ウエストゲートが効いているのだと思う。過給圧を電子制御でコントロールし、高回転域でのブーストのタレをほとんど感じさせない。だから、2速(CVTなので電子制御の仮想ギヤ)の加速より3速4速の加速感のほうが伸びがよく痛快だ。

そう、このクルマトランスミッションにCVTを採用しており、ギヤとギヤがかみ合うダイレクトな駆動感はないのだが、低中回転域のトルクにボリュームを持たせ、比較的低めの回転を使って加速をつないでいくようなプログラムにしているようで、無理に高回転まで回すより、ミッションのプログラムなりに加速していったほうが加速の伸び感、車速の乗りも良い。

 

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