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ホンダ「NSX」にできなくて、シボレー「コルベット E-Ray」にできたこと…走る舞台でキャラ激変!!「スポーツカー生産は文化事業です」

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TEXT: 西川 淳(NISHIKAWA Jun)  PHOTO: AMW

大型クルーザーがハンドリングマシンに豹変

都内早朝。京都に向けてホテルからの出発となった。ステルスモードという電動走行モードを選ぶ。ただし、エンジンを始動する前にちょっとした儀式が必要だ(キャブレター世代には慣れっこだが! )。1.シートベルトを閉める。2.ドライブモードを電動にする。3.スターターボタンを押す。この順番を間違うといきなりエンジンが掛かってびっくりしてしまう。なんらかの理由でシートベルトを外してもエンジンが掛かる。誤作動や誤走行の防止のためだろうと思うが、もう少し設定しやすかったらいいと思った。

使ってみれば便利なことは間違いない。なにせ無音で発進できる。心の中で周辺の人たちに謝らなくていい。申し訳ない気分にもならずに済んだ。

静かな走り出しはもちろん、落ち着きのあるハンドリングに十二分な加速(Z06より速い)、そして快適なクルージング性と、普通に走らせている分にはスポーツカーというよりGTカーといった方が良さそう。街中ではとにかく従順で、スーパーカーとしての迫力に欠けるとさえ思う。高速道路でのクルージング性能に至っては、さすがはアメリカンだ、まるで意のままに動く大型クルーザーのよう。これぞグランドツアラーカーだろう。

東名を走りながら「NSX」を思い出す。ホンダもバカだったよなぁ、あんなに早く出しておきながらさっさと諦めてしまって、結局のところマーケットからの支持の差ってことか、などと考えながら淡々と走っているうちに、ほとんど休憩することもなく京都に到着した。

と、ここまでは実を言うと、他のピュアエンジングレードとは違って、なんとなく輪郭がぼやけた、つかみどころのないコルベットだなぁ、という思いがまさっていた。よくできているが刺激が足りない、とでも言おうか。

走る舞台に合わせてキャラクターを変える

ふと思いつき、帰宅する前にホームワインディングコースの“嵐山高雄パークウェイ”を走ってみることにした。よくできたGTで、疲れを感じていないからこそ、そういう気分になれた、とも言える。

するとどうだ。素晴らしいハンドリングのスポーツカーに早変わりしたのだ。攻め込んでいけばいくほどに信じられないくらい自由自在にノーズが動き、コーナーでは驚異の踏ん張りをみせ、そこから圧倒的な加速で立ち上がっていく。ヨーロッパ生まれのミッドシップPHVスーパーカーと比較しても遜色のないダイナミックパフォーマンスである。

走る舞台に合わせてキャラクターを変えることができる。そんな器用なアメリカンスポーツカーなど過去にあっただろうか?

マッスルカーという言葉に代表されるようにアメ車の魅力といえばワイルドでパワーコンシャスなドライブフィールをまずは想像する。C8コルベットはそうじゃない。そもそもキャラの選択肢が多く、クルマとしての完成度も高い。そしておおむね従順なドライブフィールだ。ミッドシップ化というドラマだけを抽出すれば過激な変身にも思えたけれど、中身はとても戦略的で、純アメリカからの脱却も窺える。同時にアメリカ市場でも引き続き人気というあたり、GMシボレーはマーケットをよく知っていた。

コルベットはアメリカのクルマ好きにとってはアイコンであり魂だ。ソウルスポーツカーである。そんな大切なモデルであっても未来を見据えて大胆な変身にチャレンジし、しかも既存のオーナーをも満足させた。スポーツカーとは何か、趣味のクルマとは何か、を、これほど饒舌に語ってくれるモデルは他にないだろう。

シボレーにできて、ホンダにはできなかったのだ。開発力の差ではない。歴史的な商品力の差が歴然とあった。スポーツカーを立派に育てるためには我慢と継続が必要ということ。つまりスポーツカー生産は文化事業であるということなのだ。

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