愛好家の手元で進化し続けた初期型A110
シャシーナンバー「A110 3091」のこのクルマは、どうやら履歴を調べるとヨーロッパとアメリカを行ったり来たりしていた個体のようだ。シャシー番号から生産は1964年とごく初期のモデルであることがわかるが、残念ながらその初期時のヒストリーについてはわかっていない。
わかっている範囲では、1970年代後半に南フランスからアメリカに輸出されたこと。その時点では内装がはぎ取られ、工場出荷時に競技用の装備が施されていたことなどである。そしてある時点で、最初に搭載されていた1108ccのR8用エンジンから、戦闘力の高いA110 1300Gに搭載された1255ccエンジンに換装され、さらにその後、1300S仕様の1296ccにチューンナップされたことなどがわかった。
1978年発行の整備請求書によると、カナダのトロント在住のオーナーがルノー・フランスに直接部品を注文し、トロントで整備を受け、1981年6月にはシリンダー研磨も行われた。そして1993年9月、このクルマは次のオーナーの手に渡り、オーナー自身がトロントからカナダと米国を横断して、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの自宅までドライブし、その後もカリフォルニアへの旅行などを楽しんだという記録がある。
2000年代初頭に再びオーナーが変わり、今度はサウスカロライナ州コロンビアに移動。そこでトランスミッションが4速から5速に変更されている。しかしそこに長居はせず、2005年には今度は英国に売却され、ヨーロッパの地に戻ることになった。
新たなオーナーは競技仕様に戻し、イギリスのヒルクライムやクラブイベントなどに参戦していた。2006年にはロールケージの取り付け、軽量プレキシガラス製リアウインドウ、排気マニホールド、サイレンサー、クラッチ、タイヤの交換などが行われている。さらに2009年には新しいクラッチキット、2010年には新しい燃料ポンプと電気系統の整備を受けている。
2012年には、グロスターシャー州ストラウドにあるファクトリーでボディの塗装を剥離し、損傷したグラスファイバー製のボディ全体を補修した後、ブルーに再塗装されている。2013年には同じ工場でダッシュボードのひび割れやなどを修理し、ブラックのクラックル仕上げで再塗装した。
極上のロードカーとしてカリフォルニアへ! 2200万円超で落札されたA110の到達点
その後、さらにふたたびアメリカに渡りカリフォルニア州ソノマのオーナーのもとへ渡った。そして2022年にオークションに出品されている。その時点では競技仕様から美しいタンレザーの内装に変わっており、完璧なロードユース仕様に戻されている。ただし、ロールバーは組み込まれたままで、シートベルトも競技仕様となっている。
エスティメイト(予想落札価格)は12万5000ドル〜17万5000ドル(邦貨換算約1975万円〜約2765万円)。落札価格は14万5600ドル、レートを邦貨換算すると約2300万円であった。
フランスで産声を上げ、北米大陸を自走で横断し、英国の丘を全開で駆け抜け、再びカリフォルニアの陽光の下で極上のロードカーとして安息を得たこのA110。世界中のエンスージアストに愛され、国境を越えて引き継がれたその姿は、「軽量で操る喜びに満ちたアルピーヌ」というスポーツカーが持つ、普遍的な魔力の証明と言えるのではないだろうか。
※為替レートは1ドル=158円(2026年3月9日時点)で換算









































































































