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世界の愛好家の元で愛でられた初期型アルピーヌA110

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 2026 Courtesy of RM Sotheby's  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

愛好家の手元で進化し続けた初期型A110

シャシーナンバー「A110 3091」のこのクルマは、どうやら履歴を調べるとヨーロッパとアメリカを行ったり来たりしていた個体のようだ。シャシー番号から生産は1964年とごく初期のモデルであることがわかるが、残念ながらその初期時のヒストリーについてはわかっていない。

わかっている範囲では、1970年代後半に南フランスからアメリカに輸出されたこと。その時点では内装がはぎ取られ、工場出荷時に競技用の装備が施されていたことなどである。そしてある時点で、最初に搭載されていた1108ccのR8用エンジンから、戦闘力の高いA110 1300Gに搭載された1255ccエンジンに換装され、さらにその後、1300S仕様の1296ccにチューンナップされたことなどがわかった。

1978年発行の整備請求書によると、カナダのトロント在住のオーナーがルノー・フランスに直接部品を注文し、トロントで整備を受け、1981年6月にはシリンダー研磨も行われた。そして1993年9月、このクルマは次のオーナーの手に渡り、オーナー自身がトロントからカナダと米国を横断して、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの自宅までドライブし、その後もカリフォルニアへの旅行などを楽しんだという記録がある。

2000年代初頭に再びオーナーが変わり、今度はサウスカロライナ州コロンビアに移動。そこでトランスミッションが4速から5速に変更されている。しかしそこに長居はせず、2005年には今度は英国に売却され、ヨーロッパの地に戻ることになった。

新たなオーナーは競技仕様に戻し、イギリスのヒルクライムやクラブイベントなどに参戦していた。2006年にはロールケージの取り付け、軽量プレキシガラス製リアウインドウ、排気マニホールド、サイレンサー、クラッチ、タイヤの交換などが行われている。さらに2009年には新しいクラッチキット、2010年には新しい燃料ポンプと電気系統の整備を受けている。

2012年には、グロスターシャー州ストラウドにあるファクトリーでボディの塗装を剥離し、損傷したグラスファイバー製のボディ全体を補修した後、ブルーに再塗装されている。2013年には同じ工場でダッシュボードのひび割れやなどを修理し、ブラックのクラックル仕上げで再塗装した。

極上のロードカーとしてカリフォルニアへ! 2200万円超で落札されたA110の到達点

その後、さらにふたたびアメリカに渡りカリフォルニア州ソノマのオーナーのもとへ渡った。そして2022年にオークションに出品されている。その時点では競技仕様から美しいタンレザーの内装に変わっており、完璧なロードユース仕様に戻されている。ただし、ロールバーは組み込まれたままで、シートベルトも競技仕様となっている。

エスティメイト(予想落札価格)は12万5000ドル〜17万5000ドル(邦貨換算約1975万円〜約2765万円)。落札価格は14万5600ドル、レートを邦貨換算すると約2300万円であった。

フランスで産声を上げ、北米大陸を自走で横断し、英国の丘を全開で駆け抜け、再びカリフォルニアの陽光の下で極上のロードカーとして安息を得たこのA110。世界中のエンスージアストに愛され、国境を越えて引き継がれたその姿は、「軽量で操る喜びに満ちたアルピーヌ」というスポーツカーが持つ、普遍的な魔力の証明と言えるのではないだろうか。

※為替レートは1ドル=158円(2026年3月9日時点)で換算

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  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 幼いころからクルマに興味を持ち、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾る。 大学在学中からレースに携わり、ノバエンジニアリングの見習いメカニックとして働き、現在はレジェンドドライバーとなった桑島正美選手を担当。同時にスーパーカーブーム前夜の並行輸入業者でフェラーリ、ランボルギーニなどのスーパーカーに触れる。新車のディーノ246GTやフェラーリ365GTC4、あるいはマセラティ・ギブリなどの試乗体験は大きな財産。その後渡独。ジャーナリスト活動はドイツ在留時代の1977年に、フランクフルトモーターショーの取材をしたのが始まり。1978年帰国。当初よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動し、すでに45年の活動歴を持つ。著書に三栄書房、カースタイリング編集室刊「世界の自動車博物館」シリーズがある。 現在AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)及び自動車技術会のメンバーとして、雑誌、ネットメディアなどで執筆する傍ら、東京モーターショーガイドツアーなどで、一般向けの講習活動に従事する。このほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」で自動車関連出品の鑑定士としても活躍中である。また、ジャーナリスト活動の経験を活かし、安全運転マナーの向上を促進するため、株式会社ショーファーデプトを設立。主として事業者や特にマナーを重視する運転者に対する講習も行っている。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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